人前で発表するとき、あなたはどのようにしてパワーポイントのプレゼン資料を作るでしょうか。多くの人はスライド作成の正しい方法を理解していないため、見やすくまとめることができていません。そのため、ゴチャゴチャとして内容になってしまいます。
実際、初心者であるほどスライド作りを最初に行おうとします。しかしスライド作成より前に、話のコンセプトやストーリーの作成を先に行わなければいけません。この過程を飛ばしてスライドを作ると、何が言いたいのかよく分からないプレゼンになってしまいます。
さらにいうと、スライドはあくまでもプレゼンの補助であることを認識する必要があります。スライドに沿って話をするのではなく、コンテンツやストーリーを補足するためにスライドを活用するのです。
こうしたことを理解したうえでプレゼンを実施していく必要があります。ここでは、セミナーや発表などでスライドを作るとき、何を考えてパワーポイント資料を作成すればいいのかについて解説していきます。
スライドの枚数を絞り、1枚5分で説明する
例えば20分のプレゼンを行うとき、あなたは何枚のスライドを用意するでしょうか。初心者であれば、20枚のスライドを用意しようとします。しかし、20分の時間で20枚も使うとなると、1分で次々と変わっていく計算になります。スライドが目まぐるしく切り替わるため、聞き手は話の内容を理解できません。
これについては、あなたが世界的に有名な美術館へ行ったときを想像してみてください。このとき、有名な絵画が次から次へと出てきます。案内員から、「これがピカソの絵です」「あそこにあるのはゴッホの絵画です」と次々と説明されます。
ただ、聞き終わった後に心に残っているものは少ないです。
それよりも、「これはゴッホが描いたひまわりです。彼は1888年から1890年にかけて、ひまわりに関する絵を何点も残しています。これはその中でも……」と詳しく説明を受けた方が大きな印象として心に残ります。説明の後にじっくりと絵を見ることにより、当時の時代背景も考えながら味わえるようになります。
これはプレゼンテーションでも同様であり、スライドを絞りましょう。「1枚のスライドにつき5分を使う」のが基本であるため、20分の場合はスライド4枚が妥当です。
発表の上手な人を観察すると、多くのスライドを用いていないことが分かります。できるだけ少ない枚数で訴えかけ、聴衆の心を動かそうとします。重要なのはスライドの数ではなく、コンテンツの質です。内容を作り込んでいれば、聞き手は満足してくれます。
例えば、以下は過去に私が実際に使用したセミナーでのプレゼン資料です。
このときは1時間(60分)で話をしましたが、スライドの枚数は合計9枚でした。1枚あたり約6.7分の計算ですが、このように短くまとめる必要があります。
意識すべきポイントは「最も重要な箇所だけをスライドに書く」ことです。あなたの言いたいことをスライドに全て書き込んではいけません。スライドに書かれている重要箇所をヒントにして、話の中で補足していくのです。
スライドデザインで図や表を活用し、視覚(ビジュアル)に訴える
重要箇所だけを記載していけば、シンプルなスライドになります。さらに、スライド枚数も少なくなります。こうして、見やすいスライドが完成されます。
実際、スライドを作るときに中身が文字だらけになっていないでしょうか。
スライド上に文字を並べるだけでは、何が重要なのか伝わりにくいです。文字を読まなければ言いたいことが分からないため、理解するのに時間がかかります。そこで、キーワードを並べて図にすれば、一瞬で理解させることができます。
例えば、次のようなことをプレゼンで伝えたいとします。
サイト運営によってビジネスを行うとき、成功の階段を少しずつ登っていく必要があります。サイト作成をした後、まずはアクセスアップを図ります。次に収益化システムを組み込み、継続的に課金する仕組みを作ります。その後、企業コンサルや出版によって、ビジネスを加速させます。
これを根気強く、年単位の時間をかけて行うことがネットビジネスの基本です。 |
初心者の場合、これをそのままスライドに記します。そこで、これを箇条書きにしてみましょう。文章で記すのではなく、一行以内の箇条書きに要約することで文章を短くします。以下のように変換するのは最初のステップです。
さらに、文章ではなくてキーワードだけを抜き出すことを意識します。余計な文章をそぎ落とし、伝えたい箇所だけを残すのです。そうすると、以下のように修正できます。
欲を言えば、これを図にしましょう。「成功の階段を少しずつ登る」というイメージを植え付けるため、実際に階段になっている図を描きます。ここに、キーワードだけを組み込めば、シンプルで見やすいスライドが完成されます。これらを意識すると、下図のように改良できます。
情報量を減らすことにより、本当に伝えたい内容だけが目に入ります。後はスピーチによって補足をすることで、聴衆の心の中に強烈な印象を残します。
文章を表にすると見やすくまとまる
これと同様に、表を活用することも有効です。2~3つの事柄を対比させるとき、表を使ってみてください。先ほどと同じように、表を利用するときもキーワードだけを記していきます。
文章だけのスライドでは、何が言いたいのか分かりにくいです。そこで重要箇所だけを対比させ、あなたの主張を明確化するのです。
例えば、ブログとサイトの違いについて述べるとします。このとき、文章を箇条書きにしただけでは分かりにくいです。
そこで、下のように表へと書き換えます。
このように、キーワード(言いたいことだけ)を端的に並べるだけで見やすくなります。文章では伝わりにくかったとしても、表にすれば一瞬で理解できます。
文章というのは、長くなるほど意味が通じにくくなります。多くの人はたくさん説明しようとしますが、むしろ逆効果です。
図や表に変換することで視覚に訴えるスライド作成について紹介しましたが、これらに共通するのは、どれも「シンプルなスライドデザインを行う」ことです。文章ではなく、キーワードだけで聴衆に言いたいことを示すのです。もちろん、写真やイラストを有効に活用しても良いです。
絵は文字よりも多くのメッセージを発します。文字では伝わりにくい内容であったとしても、これをイラストにすることで、一瞬で伝わるようになることは頻繁にあります。伝わるプレゼンを行うため、図や表などをできるだけ活用しましょう。
あまり人前で発表を行ったことのないプレゼン初心者であるほど、文章の羅列を犯してしまいがちです。
そうではなく、視覚に訴えかけるスライド作成を意識してください。シンプルなスライドであるほど、伝わるプレゼンになります。
セミナー内容をレジュメに全て書いてはいけない
なお、レジュメ(スライド)に文字としてセミナー内容を羅列しているだけの場合、他にも問題点が起こります。スライドを読むだけのセミナー内容になりがちのため、プレゼンをつまらなく感じてしまうようになるのです。
スライドに文字として全て書いた場合、講師にとっては読み上げるだけなのでプレゼン作業はかなり楽です。しかし、受講者にとっては大きな不満が残ります。
スライドに書いてある内容を読むだけであれば、セミナーに来る意味は薄れてしまいます。そのレジュメを持ち帰って家で読んでも変わらないからです。受講者はレジュメに書かれていない内容も含めて、セミナーを聞きに来ているのです。
スライドを作るとき、既に述べた通り「言いたいこと」を全て書かないようにしましょう。そうではなく、絶対に伝えるべき「要点」だけを書くようにしています。例えば、私がセミナーで使用したスライドとして以下のようなものがあります。
このように、できるだけ言葉を少なくしていることが分かります。言いたいことだけを端的に示していたとしても、セミナー内で言葉を補えば問題ありません。また、図を用いることで視覚に訴えるように注力していることが分かると思います。
あとは、スライドを見るだけで「次に何を言えば良いのか、勝手に言葉が出てくる」という状態になるまで練習するだけです。
美しいパワーポイントスライドの原則を理解する
実際のところ、スライド作成について学んでいる人は少数です。セミナー講師で稼いでいる人であっても、スライドが汚い人のほうが圧倒的に多いです。しかし、その時点で「セミナー内容が安っぽくなる」ことに気付かなければいけません。
ここまで、図や表を使って端的に内容をまとめることの重要性を解説してきましたが、他にも以下のような間違いを犯している人は多いです。
- 文字が小さくて読めない(また、異常に文字が大きい)
- スライドの背景色が青や黒などで見にくい
- 文字色が薄く、認識しづらい
セミナー講師として話す以上、それまでの実績や持っている知識・ノウハウが一番重要なのは言うまでもありません。ただ、それに加えて「受講者が理解しやすい美しいスライド」を目指すだけでも満足度は飛躍的に上昇します。
別に難しいことを考える必要はありません。美しいスライドといっても、「受講者が見やすいスライドにするにはどうすれば良いか」を考えるだけです。例えば、以下のようなものです。
- 文字の大きさを揃え、文字色は3色まで(多くても4色)
- アニメーションを使用しない
- スライド背景は白に統一する
それぞれについて解説していきます。
文字の大きさと色を整える
パワーポイントの文字が小さすぎると、それだけで分かりにくい印象を与えます。文章が読みにくいため、スライドを見るにも苦労してしまいます。そこで、文字は大きくしましょう。フォントが大きすぎても問題ですが、ある程度の大きさで揃えることを意識してください。私の場合、フォントの大きさを「24」で統一しています。
なお、文字は明朝体よりもゴシック体が一般的です。スライドで写すとき、ゴシック体の方が力強く映るからです。数字やローマ字の場合、Times New RomanよりもArialの方が一般的です。
また、文字の罫線や色にも気を配りましょう。罫線や色は少ない方が望ましいです。基本的に私は、罫線をスライド内で使いません。
同じように、色も多くの種類を使ってはいけません。さまざまな色を活用して虹色のようなスライドになると、見るに堪えないスライドになります。そこで、「黒」を除き使う色は3色までに限定してください。多くても4色までです。参考までに、私は「青、緑、オレンジ」を使っています。4色の場合、ここに紺色を入れます。
なお、スライド全体を通して重要なこととして「すべてのデザインを統一する」ことがあげられます。スライドごとにフォントが違ってはいけませんし、色調が変わって違和感を与えてもいけません。統一感を出すために、デザインを最初から最後まで一致させることは重要です。
アニメーションを使わない
多くの人はなぜかアニメーションを多用する傾向にあります。ただ、スライドの中をごちゃごちゃと動いて回るため、聴衆にとってアニメーションは分かりにくい印象しか与えません。
私の場合、アニメーションを用いることはまずありません。一流のプレゼンターも同様であり、アニメーションを連発する人はいません。「アニメーションの使い過ぎは聞き手の集中力を奪ってしまう」という事実を知っているからです。
シンプルなスライドが最も効果的であるため、できるだけアニメーションを使わないようにしましょう。
同じようにスライドが切り替わるとき、めくるように表示させたり、少しずつ画面を変えたりするアニメーション効果をつける人がいます。これは絶対に止めてください。スライドが切り替わるときの画面効果は、聴衆の注意をそらすというデメリットしかありません。
無駄な機能を使おうとするほど、プレゼンの質が落ちると考えましょう。
背景色は白で統一する
スライド背景の色は決まっています。それは、「白」です。この色以外にありえません。少なくとも、あなたは必ず白を基調とした背景色のスライドを作成しましょう。
そうはいっても、スライド背景を青にしたり緑にしたりしている人は多いです。これは、聴衆に対して「自分は二流の講師です」と宣伝していることと同じです。スライド背景が青や緑などであると、それだけで見にくいです。
自己満足のスライドを作ってはいけません。背景を白以外にして、自己満足のスライド作成を考えた時点でパワーポイントのプレゼン資料作成は失敗だといえます。
別の表現で同じことを3回示し、コンテンツを深める
なお実際にスライドを作成するときは、ここまでのポイントを理解して実施するだけでなく、「プレゼンで同じことを3回は伝える」こともコツになります。
多くの人は、「1回話せば聞き手は理解してくれる」と思っています。しかし実際は、1回で理解できる頭の良い人は稀であり、何度も聞くことで理解を深めていく必要があります。
もちろん、まったく同じ説明をしてはいけません。このときは、「表現を変える」「新たなデータや資料を出す」などをします。見せ方や角度を変えて聞き手に示すのです。
例えば、「タバコは健康に悪い」という話をするとします。タバコの害について話した後、今度は「喫煙率と肺がん患者の推移」というデータを図表で提示します。また次のスライドで、「双子を比べ、タバコを吸っているほうだけ明らかに老けが進んでいる」という写真を提示します。
つまり、以下のような順番になります。
- 事実を述べる(この場合はタバコの害について)
- 図表でデータの提示
- 実際の写真で対比させる
同じことを別の角度で表すことにより、単に「タバコは健康に悪い」と話すよりも説得力が増し、聞き手の印象に強く残ります。
プレゼンでは、本当に言いたいことだけを伝える方が効果的です。内容を詰め込みすぎると伝わらないプレゼンになりますが、一つのことを深く掘り下げていけば聴衆はより理解するようになり、満足するのです。
プレゼンでは、できるだけ少ないスライド枚数で伝えることを考え、さらに伝えるべきポイントも絞って同じ内容を別の表現で3回は伝えましょう。
これにワークまで加えれば、より内容の優れたスライドを作成できるようになります。
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かっこいいスライドほどシンプル
ダメな人ほどパワーポイント資料にいろんな内容を詰め込み、さらには文字情報ばかりになります。そのため、結果としてプレゼン内容がぐちゃぐちゃになります。
そうではなく、できるだけシンプルなスライドを意識しましょう。かっこいいスライドであるほど、内容は少なくシンプルにまとめられています。
- セミナーで伝えることを絞っている
- スライド枚数は少ない
- 文字情報は最小限であり、図や表が多い
- フォントは大きく、背景色が白色など基本を理解している
- アニメーションなど無駄な機能を使っていない
これらを理解したうえでパワーポイントのプレゼン資料を作成するようにしましょう。作り方を知ったうえでスライドを構築すれば、伝わるプレゼン内容に仕上げられるようになります。