テレビCMなどで有名人が商品を紹介しているケースは多いと思います。これにはきちんとした理由があり、それは「有名人を用いることによって、その商品をよく見せようとする効果が働く」からです。
その有名人と商品とは全く関係ないです。「〇〇さんも使っています」とか言いながら、実際はそのような商品を一回も使っていないことがほとんどです。スポンサーとして、広告契約しているためにそのように言っているにすぎません。
多くのテレビCMが人気タレントを起用している理由がここにあります。何とかしてその有名人のイメージと自社商品とを結び付けようとするのです。
同じように医師や弁護士などの難しい資格の保有者であれば、初対面ではそれだけで「この人はすごい人なのでは」と思ってもらいやすくなります。
人間というのは、特に考えず何かの対象(今回の例では、人気タレントや資格)と結び付け、判断する傾向があります。こうした傾向をビジネスでのマーケティングや営業で用いれば、売上を拡大させやすくなります。そこで、どのようにしてビジネス戦略を練ればいいのかを解説していきます。
人間は良いものは自分に近づける
人間の性質として、「何か出来事があると、人はそれと関係する物を結び付ける」ように行動します。これは、あなた自身の行動を思い返すと理解しやすいと思います。
例えば良い知らせがあったとき、上司へ報告どのように報告するでしょうか。多分、何のためらいもなく報告できると思います。上司に良い知らせを行うことで、「自分」と「良い知らせ」を結びつけることができます。これによって自分の価値が上がっていきます。
それでは逆に、仕事に失敗した悪い知らせを行うときはどうでしょうか。とても話しづらいと思います。
これは他人の失敗に関しても同じです。同僚から、「私の代わりに上司に話しに行ってよ」と言われたとしたら、やはり他人の失敗であっても言いにくいものです。「自分」と「悪い知らせ」が結びついてしまうからです。
他人の悪い知らせを報告するにしても、「自分は関わってはいないのですが……」と何とかして自分と悪い知らせとを遠ざけようと努力するはずです。このように、人は特定の事象と結び付けて考えるのです。
相手に好印象を与えるハロー効果・連合の法則
これらを理解したうえで、心理学の中でもイメージだけで人や物を評価してしまう現象を「ハロー効果(連合の法則)」といいます。ハロー効果も連合の法則も意味は同じだと考えましょう。
人間は肩書に弱いです。これは、そうした肩書と人間を結び付けて考えてしまうからです。また、肩書に限らずその人の態度も大きな影響を与えます。そのため、ハロー効果には以下のようなさまざまな要素があります。
- 社会的要素(権威性):医師、薬剤師などの資格、大企業の社長のような肩書など
- 性格的要素:誠実な言動、真面目な言葉遣い、親切な対応、笑顔など
社会的要素(権威)で働くハロー効果の例としては、「初対面の人と名刺交換をするとき、相手が大企業の経営者だと知った場合、思わず身構えてしまう」などがあげられます。
また、性格的要素で働くハロー効果の例としては、飲食店で利用客に対してものすごく親切に対応する店員の様子を見て、その店員の内面まで「親切な人」というイメージを抱いてしまうことがあげられます。
ハロー効果を使って、自分のイメージを操作する
人と接する場合に、ハロー効果をうまく活用することで、意図的に自分の印象を良くすることができます。
またハロー効果は、詐欺師が用いる心理テクニックでもあります。ハロー効果を悪用し、人の財産を奪う者として詐欺師があげられます。プロの詐欺師は、資産家や医師などの肩書を持っているように見せかけ、それらしい振る舞いと話し方でターゲットをだまします。
もちろん詐欺は犯罪のため、絶対にしてはいけません。ただ、これをビジネスの場で良い方向に活用しましょう。
あなたの外見が特別良いわけではなく、すごい肩書があるわけでなくても、ハロー効果を有効活用することができます。
例えば、ダイエットサプリメントを販売する際、スリムで美人の女性が商品を手に取っている画像を広告として出します。こうすることで、商品とスリムな美人のイメージを結びつけることができます。
ダイエットや美容整形、ブライダルなど、女性向けの広告を見ると美しい女性を起用していることがあります。これは、ハロー効果を狙っているからです。
わずかな違いですが、こうすると商品への問い合わせがたくさん来るようになります。
他人の良いイメージを商品に結びつけるブランディング戦略
また大手企業が有名タレントを起用するのは、前述の通り「自社製品・サービスと大物タレントを結び付けることができるから」といえます。
確かにスポンサー料は高額です。ただ、自社ブランドイメージの向上を考えると、それでも問題なく元を取れてしまうのです。
しかし、経済力がそれほど高くない中小零細企業などの場合、強いネームバリューをもつ芸能人に広告やCMに出演してもらうのは現実的ではありません。無名企業や規模が小さい会社の場合、誰もが知っている大企業とは違う戦略を練る必要があります。
例えば、化粧品の広告を作るとき、有名芸能人ではなく無名の美人女性を起用します。もし自社の社員のなかに美人女性がいるのであれば、その人に出演してもらうようにします。または、出張モデルを頼めば数万円の費用で撮影可能です。
その結果、化粧品の広告を見た人の頭の中で、無名の美人女性と化粧品のイメージが結びつきます。さらに、広告を見た人は「この化粧品を使えば、この女性のようになれる」と考えます。
芸能人を起用できない場合には、何らかの魅力的な特徴をもつ無名の人の協力を得ることで、自社の商品販売にも「連合の法則」を活用することができます。この方法であれば、広告費に大金をつぎ込めない企業であっても十分に実行可能です。
美容関係での事例を出しましたが、これがサプリメントを販売する場面では「医師監修」を付けるといいです。他にも物販で「価値の高い製品である」とアピールしたい場合、中国製ではなく「日本製(Made in Japan)」であることを押し出すといいです。
いずれにしても、こうした何かしらの権威性を付けたり、良い効果と結び付けたりすることを考えるようにしましょう。
営業マンで信頼されると売れる理由
それでは、別の角度でハロー効果(連合の法則)を確認していきましょう。例えばセールスの場面であると、「お客さんとの信頼関係が重要」といわれています。これは、なぜなのでしょうか。
実際のところ、人が異なると商品の売れ行きも違っていきます。営業職では、全く同じ商品を扱っているにも関わらず、人によって営業成績が大幅に異なるのです。
このとき、できるセールスマンはお客さんの話に合わせて楽しい会話だけを心がけます。信頼関係を作るべき初期段階に商品を勧めることはなく、「楽しい会話=あなた」という結びつきをなんとかして構築しようとします。
これによって、「あなたが勧める商品=良い商品」という図式にもっていくことができます。「営業マンによる信頼」という大きなハロー効果が加わった結果、セールスで大きな結果を出せるようになります。
営業職の人の中で「自社商品が悪いためになかなか売れない」という人がいます。しかし、営業の中にはどんな物でも売ってしまう人がいます。この事実を考えると、商品が悪いのではなくて、本当はその人自体の営業手法が悪いことに気が付かないといけないのです。
他の人に説明してもらう権威付けの証明
このとき、権威付けを行う最も手っ取り早い方法として、「他人に紹介してもらう」というテクニックがあげられます。
自分の実績を紹介するにしても、自分自身で言うのはやはりどうしても信頼性が落ちてしまいます。自慢に聞こえてしまうからです。
そこで、これを回避するために他の人を使います。つまり自分自身で「私はこのような実績があります」と紹介するよりも、他の人を連れてきて「この人はこんな実績がある素晴らしい方です」と言うように仕向けたほうが信頼されやすくなります。
例えば学会や市民セミナーなど、これらの会が開かれたときに講師は必ず座長から紹介してもらいます。これは、他人から紹介してもらったほうが大きなハロー効果を生み出せるようになるからです。
コールセンター女性の紹介方法で印象が変わる
そこで、これをビジネスで応用しましょう。例えば普通の会社であれば、受付の女性が電話を取った後にそれぞれの担当へと電話を繋いでいきます。このとき、通常は「担当の者と代わります」と言うだけです。
一方、担当へ電話を繋げる際に「その内容であれば、弊社で営業成績トップの〇〇が対応できると思いますので代わるように致します」と言って電話を繋ぎます。
このように、「営業成績トップ」と敢えて伝えることで最初に権威付けをしておくのです。
これによって電話での交渉をスムーズにしている企業は実在します。
当然ですが、既に何回も取引をしている会社に対してこの方法を行うと嫌われてしまいます。そのため、この方法は顧客からのクレーム対応だったり、初回の電話依頼だったりする場面で大きな効果を発揮します。
わずかな違いですが、これだけでマーケティングや営業での売上が何倍にもなることはよくあります。ハロー効果(連合の法則)を用いた権威付けというのは、それだけ優れているのです。
連合の法則による負の側面も理解すべき
なお、権威性を活用するときはハロー効果に関する悪い作用についても理解する必要があります。
例えば、起用していた芸能人が浮気や薬物などのスキャンダルを起こした場合、その芸能人が出演していたCMはすべて取り下げられるようになります。あらゆる広告媒体から、一瞬のうちに消えるようになるのです。
これは、連合の法則が負の方向にも影響するからです。浮気していた芸能人のように、悪いイメージのある人が出演しているテレビCMを一般人が見たとき、その広告の商品も悪い製品であるかのように映ってしまうのです。
ハロー効果というのは、その使い方を誤ると悪いイメージがついてしまうというリスクを忘れてはいけません。
・負の権威性はビジネスを停滞させる
ちなみに、これは権威性を付与する側も同じです。例えば、以前にペニーオークション詐欺事件というものがありました。
一般的なオークションの場合、落札したらサイト運営側に手数料を支払うことになります。一方でペニーオークションの場合、落札ではなく「入札(〇円で買いたいという意思表示をすること)で手数料がかかる」という仕組みになってします。
ただ、利用者が入札しても「サイト運営側が自動で再入札し、どれだけ頑張って入札しても商品を購入できない」という詐欺システムとなっており、手数料分だけ確実に損をする仕組みがペニーオークション詐欺です。
このペニーオークションについて、かつて芸能人が自身のブログでペニーオークションを宣伝したことがあります。このときは宣伝費用として30万円を受け取ったといわれています。実際のブログ記事が以下になります。
しかし、ペニーオークション詐欺事件が明るみになった結果、ペニーオークションに関与した芸能人たちはほぼ全員、テレビから姿を消すことになりました。詐欺会社であったことを知らなかったとはいえ、「詐欺事件に関与したタレント」という負のハロー効果が生まれてしまったからです。
ハロー効果(連合の法則)は非常に大きな効果を出せることを記しました。ただ、悪い事態が起こったときについても、負の作用が大きいことは理解しましょう。
心理学での権威性を活用し、ビジネスで用いる
ハロー効果(連合の法則)とは、要は「虎の威を借る狐」のことです。自分一人だけの力ではなく、他の力を利用することで商品や自分自身をよく見せるように仕向けるのです。
このときの権威性としては、資格や肩書などでもいいですし、有名人からの紹介でも問題ありません。応用編になると、「誠実な態度」などについてもハロー効果が大きく関わるようになります。良い作用をするものについて、できるだけあなた自身の周囲に集めるようにするのです。
これだけで大きな権威性が付与されるようになり、ビジネスでの商品・サービスが売れていくようになります。
ただ、マーケティングや営業のときに使い方を間違えると、ハロー効果は負の作用を生み出すことは理解しましょう。これらを認識したうえで正しく権威付けを行い、ビジネスを加速させるといいです。
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