人に頼み事をするとき、小さなお願い事から入ると受け入れてくれる確率が高くなります。つまり、少しずつ要求を上げていくのです。

人間は、一度ある行為を行うようになると、一貫してその行動を取り続けるという特性があります。そこで、この特性を利用することによって本当の要求を引き出すことができるようになります。これをフット・イン・ザ・ドア・テクニックと呼びます。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックについては、マーケティングや営業などさまざまな場面で利用されています。あらゆる人が利用しているため、あなたについても活用することで大きな効果を得られるようになります。

そこで、「どのようにして小さいお願いを利用することで、ビジネスに結び付ければいいのか」について、具体例を述べながら解説していきます。

小さい頼みごとから行うと承諾される

ビジネスの場では、「いきなり本命の要求を行うのではなく、小さい頼みごとから入って少しずつ要求を上げていくテクニック」が頻繁に使われています。例えば、広告を見ると「初回注文に限り80%OFF」などの文字を見たことがあると思います。

通常よりも、もの凄くハードルの低いオファーを提示することにより、何とか商品を購入してもらおうとしています。例えば、以下は「非常に安い5日分の化粧品のサンプルセット」です。

こうしたオファーを提示しても大丈夫なのかと思いますが、全く問題ありません。少額でもお金を支払ってくれた人だと、継続的なお客さんになってくれる可能性が高いためです。

例えば、500円という低額でもいいので製品を取り寄せてくれるということは、何かしらその商品に興味を持っていることになります。そのため、少しでもお金を払ってくれた人は立派なお客様となります。もし、その商品を試してみて品質や内容が良ければ問題なく本製品を購入してくれます。

初回の障壁を低くする理由

なぜ最初のお願いのハードルを低くするべきかというと、その商品が顧客側にとって本当に優れているかどうか不明だからです。

人間というのは、本当に優れた商品であれば喜んでお金を支払います。商品を購入し、サービスを受けるのです。ただ、その商品・サービスを試したことがない場合は値段通りの効能効果を得られるか不明です。そのため、お金を支払うときにためらいます。

そこで低額商品をばら撒けば、優れた効果を得られるかどうか顧客はテストできます。このようにビジネスを行う上では、最初の障壁を極端に低く設定しなければいけません。

もっといえば、新規顧客を開拓する段階で利益が出てはいけません。利益が出ているというのは、集客を本気で考えていないことになります。集客段階では赤字でもいいので優れた低額商品を提供し、見込み客を集める必要があります。

このポイントを踏まえた上で世の中を見ると、「なぜ化粧品会社や健康食品会社が当初、赤字を出しながらも試供品や低額のサンプルをばら撒いているのか」を理解できると思います。

何らかの商売を実践するとき、最初は軽いお願いを行い、そこから本命の要求を行います。ビジネスでいえば、「最初は80%OFFで提供するが、その後に行うフォローの電話によって継続購入へと誘導する」などがあります。

あらゆる場面でフット・イン・ザ・ドア・テクニックが使われているため、これを認識して応用できるだけでもビジネススキルが上がっていきます。

営業ではフロントエンド・バックエンドが使われる

このように、マーケティングの世界では広くフット・イン・ザ・ドア・テクニックが利用されています。当然、営業を仕掛ける場面でもフット・イン・ザ・ドア・テクニックは効果的です。

心理学では、このようにフット・イン・ザ・ドア・テクニックといいますが、営業では「フロントエンド」「バックエンド」という言葉のほうが頻繁に利用されます。言葉は違いますが、意味はフット・イン・ザ・ドア・テクニックもフロントエンド・バックエンドも同じです。

フロントエンドというのは、最初に購入してもらう商品のことを指します。小さいお願いとして、少額商品を提供します。そうしてフロントエンド商品を買ってもらったら、高額商品(本命の商品)を提示します。

商品内容は業界ごとに異なりますが、例えば以下のようになります。

業態 フロントエンド商品 バックエンド商品
化粧品会社 サンプル購入 化粧品の定期購入
住宅メーカー 展示場への案内 家の販売
保険代理店 保険セミナーの開催 保険への加入
通信教育 初月500円 次月以降4,000円

フロントエンドでは集客に徹し、バックエンドでようやく利益が出るように仕掛けるマーケティング手法になります。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの心理学は、営業ではフロントエンド・バックエンドと呼ばれます。両者とも考え方や意味は同じですが、言葉が変わってくると考えましょう。

営業やマーケティングで重要な一貫性の法則の具体例

それでは、なぜフット・イン・ザ・ドア・テクニックが有効なのでしょうか。これは、一貫性の法則が関与しているからです。一貫性の方法とは、「人は一定の行動をとり続ける」という行動心理になります。

例えば、人はなぜ結婚式を挙げるのでしょうか。しかも、宗教や文化に関係なく世界共通で結婚式を行います。これは、いろんな人の前で「私たちは結婚します」と宣言することで、そうした「夫婦としての行動を、将来に渡ってとり続けようとする力」が加わるからです。

他人にコミットメント(宣言)すると強制力が生まれます。しかも、公言する人が多いほど強制力が生まれ、これは一貫性の法則が強く働く結果であることが分かっています。

また、フット・イン・ザ・ドア・テクニックも同じです。「少額でも商品・サービスを購入する」という行動を選択したことにより、その上位版である高額商品を購入するように行動をとり続けるようになるのです。

そこで、まずは簡単に承諾してくれる小さなお願いから入ります。いきなり商品購入をお願いするよりも、「製品説明を聞いてみませんか?」と提案するほうが成約率は高いです。ビジネスでマーケティングや営業を実践するとき、そのやり方を変えるだけで大きな成果を生み出せるようになります。

ローボールテクニックなど、心理学への対策を練る

ただ、フット・イン・ザ・ドア・テクニックは効果的な手法であるために、取り入れるとビジネスで大きな売り上げを出せる一方で、他の人もあなたに対してこうした心理学のテクニックを活用しようとします。そのため、事前に対策を考えなければいけません。

よくあるのが、ローボールテクニックと呼ばれる手法になります。フット・イン・ザ・ドア・テクニックと似ており、最初は小さいお願いから入ります。ただ、ローボールテクニックでは「条件を示して承諾してもらったあと、最初に記された特典を後で取り外す手法」になります。

最初の良い条件が取り去られたのであれば、断ればいいと思うかもしれません。ただ、人間というのは一貫性の法則が働いているため、一度でも承諾すればその後はなかなか断らないようになっています。

例えば、以下のようになります。

  • A:来週に「4人×4人」で合コンするけど行こう!
  • B:いいよ
  • A:ごめん、女の子が2人ドタキャンして「男4人×女2人」になったけど大丈夫だよね?
  • B:……(既に行くことを承諾したしなぁ)

ザックリというと、このようになります。他にも、例えば携帯電話を契約するときに「基本料金は〇円になりますが、ここに△△のオプションを付けないと使い勝手が悪くなります」などのようにいわれ、金額が思ったよりも高くなったとしても人はそのまま契約してしまいます。

ローボールテクニックというのは、いろんな場面で活用されています。最初に小さいお願いごとをして承諾してくれれば、その後に不利な条件を提示したとしてもその条件を承諾してくれやすくなるのです。

・サンクコストを無視する

それでは、こうしたフット・イン・ザ・ドア・テクニックを活用したローボールテクニックへの対処法は何があるのでしょうか。これは、少額のお金を支払っていたり、既に承諾していたりしたとしても、強い意志をもって断るしかありません。

ビジネスではサンクコストと呼ばれていますが、人は一つのことにお金や時間を費やしたとき、もったいないと考えて執着する傾向にあります。

例えば、薬剤師の資格を保有する人はほぼ全員が医療業界に就職します。その他の職業を考えることはしません。たとえ、実際には他に向いている職種があっても資格を活かそうとするのです。資格によって視野が狭くなっている例ですが、これがサンクコストです。難しい資格であるほど、その資格内で留まろうとする傾向が強くなります。

そこで、サンクコストは思い切って無視しましょう。たとえお金を出したり、承諾したりしてそのために労力や時間を費やしていたとしても、思い切って断る強い意志をもつことが対処法になります。

サンクコストに捉われる場合、確実に事態は悪い方向に向きます。サンクコストの概念を知り、どう動けば最善の選択になるのかを理解することがフット・イン・ザ・ドア・テクニックへの対処法だといえます。

逆の心理手法であるドア・イン・ザ・フェイス・テクニック

なお、フット・イン・ザ・ドア・テクニックを直訳すると、「相手がドアを開けたときに、少しでもいいので足を入れてしまおう」になります。要は、小さいお願いをするのです。

ただ心理学には、このようなフット・イン・ザ・ドア・テクニックの逆として、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックがあります。最初に小さなお願いをする方法に対して、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックは初めに大きい頼みごとをした後に本命のお願いをします。例えば、以下のようになります。

  • A:お願い! 今日中に3万円を貸してほしい!
  • B:ちょっと金額が大きいよ。
  • A:それなら、5,000円でいいから!
  • B:仕方ないけど、それならいいよ。

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックの場合、承諾ではなく「断られることが前提」でお願いごとをします。その後、すかさず本命のお願いをします。相手は断っているため「断って悪い」という感情を抱きます。そうすれば、本命の願いを聞き入れやすくなるのです。

一見すると真逆のようなテクニックですが、実はどちらの方法もとても有効です。きちんと心理学によって説明できるやり方であるため、その場に合わせて「どちらの手法を用いれば良いのか」を考えることができれば、問題ありません。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの意味を考え、ビジネスに活かす

ビジネス活動を実践するとき、マーケティングや営業ではどれだけ心理学を取り入れて活用できるのかが重要になります。その中でも、フット・イン・ザ・ドア・テクニックは基本的なやり方の一つになります。

本題を最初に伝えるのではなく、最初は小さいお願いごとから入るようにしましょう。そうすれば、相手は一貫して行動をとり続けるようになり、あなたが売りたい本命の商品・サービスを購入してくれるようになります。

ただフット・イン・ザ・ドア・テクニックは、相手を不利な条件に陥れるローボールテクニックなどにも通用します。そこで、事前に対処法も理解するようにしましょう。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの具体例や対処法について解説してきましたが、これらを活用できる場面は多いです。そこで利用場面や意味を考え、必ずビジネスで用いるといいです。

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