人がどのような物に価値を見出して値段を設定するかというと、これには希少性が大きく関与しています。その物が希少で珍しいものであるほど、人が感じられる価値は高くなっていきます。

例えば、なぜ金や銀は高いのでしょうか。理由は簡単であり、その物の数自体が少ないためです。一方で鉄や銅は数が多いため、これらを金や銀に比べると格段に安い値段となります。

また、キャビアやフォアグラなどの食材はなぜ高いのでしょうか。これはただ単に、「採れる数が少ない」というだけであり、必ずしもその食材自体がおいしいからではありません。安くてもおいしい料理はいくらでもありますが、たまたまこれら食材の数が少なかったために値段が高騰しているのです。

松茸も同じであり、中国産は安いが日本産だと圧倒的に高いです。このように数が少ないものほど、高い価値を感じるようになる人間心理を「希少性の原理」といいます。心理学では広く活用されており、ビジネスの場でも広く応用されています。

このとき存在する数自体が少ない貴重なものでなくても、売り方などを少し工夫するだけで、自社商品を「希少性があるもの」に変えられます。ここでは、「希少性の原理を活用した事例」「希少性の原理を使うときの理由付けのポイント」について解説します。

珍しいと高い価値を感じる経済学のマーケティング理論

希少性の原理とは、「求められている量に比べて、供給できる量が少ない物」など、希少なものであるほど価値が高く感じられる心理現象のことを指します。

人は希少性があると判断した物に対し、「この機会を逃したら、二度と手に入らないかもしれない」と考え、高い価値を感じるようになります。

例えば、自分の住んでいる地域の近くに少し有名な観光地があったとしても、いつでも行けると思って実際に訪れたことがない人が多いです。

しかし、これが引越しする場面であればどうでしょうか。多分、多くの人が「引越しで土地を離れる前に見ておこう」と思うはずです。それまでいくらでも行くチャンスがあったのに、引越し前になるとようやく動き出します。

このように、「これからは行く機会がなくなる」ため、そのもの自体が希少な存在になります。こうなるとようやく人は動くようになります。

「数自体が少ないもの」「今すぐ決断しなければ手に入らなくなる物」に対して、人間は心を揺さぶられてしまいます。その結果、考える時間もなく行動に移してしまうのです。

ビジネスではこの希少性の原理が頻繁に使われています。限定性を打ち出せば、お客さんに高い価値を感じてもらえて売上を増やすことができます。

限定性がないと購買意欲を掻き立てられない

逆に、ビジネスで最も良くない手法は、「いつでもこの商品を買うことができますよ」という見せ方をすることです。

この場合であると、人間は買わないという行動を取ります。商品を確認した見込み客から「それほど貴重ではなく、いつでも買えるものなら、必要になったときに買うかどうか決めればいい」と判断されるためです。先ほどの、いつでも行ける観光地と同じ状況に陥るのです。

いつでも買える場合、見込み客にとって「商品の購入を検討するタイミング」がいつまでも来なかったり、商品そのものの存在が忘れ去られたりしてしまいます。

ビジネスを展開するのであれば、「何とかして希少性をもたせられないか」を考えなければいけません。自社の商品・サービスに希少性限定性をもたせ、購買意欲を掻き立てるようにマーケティング戦略を練るのです。

商品の価値を高めるには種類がある

それでは、どのように経済学・心理学で頻繁に用いられる限定性の理論を利用し、商品の価値を高めるようにすればいいのでしょうか。

購買意欲を掻き立てるためには、「数量の限定」「期間の限定」「特典の限定」の3つがあげられます。これら3つの手法について、一つひとつ事例を取り上げて解説していきます。

数量を限定する

数量の限定では、あらかじめ商品の販売数を少なめに設定し、見込み客に「少ない量しか販売されないから貴重なものだ」と感じさせて購買意欲を高めます。

例えば、通販番組の商品紹介では「こちらの商品の購入は、限定500名様までとさせていただきます」などの言い回しがよく使われます。

このセリフを言うことで、番組を見ている見込み客の何人かが「500人分売れてしまったら、二度と手に入らなくなるから、今購入する決断をしよう」と思い、商品購入の問い合わせをするのです。

例えば、以下はとある大手家電量販店で、数量を限定して販売している様子です。

「展示品大処分品」であり、同じ安い値段で購入できるのはこの商品だけになります。

このような数量の限定性を示した宣伝を行うことで、お客さんに「この商品が売れたら同じものは手に入らなくなるから、買えるうちに買っておこう」と感じさせ、店頭の商品が売れやすくなります。

期間を限定する

また、期間の限定もかなり強力な手法です。期間の限定では、商品を販売する期間を短めに設定しておき、見込み客に「この日を過ぎたら買えなくなるから、後悔しないために買っておこうかな」と判断させて購入に踏み切らせます。

たとえば、家電量販店やスーパーマーケットなどでは、「こちらの商品は、5~8日までの期間限定販売です」といった売り出しを実施していることがあります。以下のような感じです。

この売り出しをすることで、見込み客に「この日を過ぎたら二度と買えない。必要になるかもしれないから今のうちに買っておこう」と思わせることができ、商品が売れやすくなります。

特典を限定する

これに加えて「特典の限定」も有効です。これはネットビジネスでは頻繁に使われる手法であり、特典を作り出せればいくらでも限定性を付けることができます。

人によっては時間経過と共に特典を一つずつ削除していき、限定性を全面に打ち出している人もいます。

特典の限定では、数量、または期間限定の特典を商品に追加し、「この商品を買っていただいた方には、先着○名様限定(□月△日までの期間限定)で、こちらの特典も差し上げます」というオファーをします。

そうすることで、見込み客に「早めに買わないと特典が手に入らなくなるから、今のうちにこの商品を買って特典をもらっておこう」と感じさせ、購入に踏み切らせます。

例えば、クレジットカードのネット申し込みでは、「○月○日までの期間限定で、新規入会の方に最大6,000円相当のポイントをプレゼントします」などのようなオファーを打ち出していることがあります。

以下の有名クレジットカード会社では、指定した期間までにクレジットカードに新規入会することで、特典として数千円分のポイントをプレゼントするキャンペーンを行っています。

このようなキャンペーンを行うことで、クレジットカードの入会を検討している見込み客は「今このカードを作ればたくさん特典ポイントがもらえてお得だから、今のうちに作っておこう」と判断します。

こうした手法により、クレジットカード会社は大量の新規入会者の獲得に成功しています。

希少性の原理を使うとき、理由を付けなければいけない

希少性の原理の応用はマーケティングで大変有効ですが、理由を付けるとさらに希少性を高めることができます。

逆に商品の希少性に理由付けをしなければ、見込み客から「ただ希少性があるように見せかけているだけでは?」と思われてしまう可能性があります。

ただ、理由付けをするとはいっても、正直なものであれば、基本的にはどのような理由でも構いません。例えば、「貴重な原材料を使っていて、ごくわずかしか作れない」「一つずつ丁寧に作成している」という事情があれば、それを包み隠さず提示しなければいけません。

そうすることで、見込み客は納得するだけでなく、高額な値段であっても商品を買ってくれる可能性が高まります。

例えばある有名な日本製革製品ブランドでは、日本の熟練した職人たちがいくつもの「手間と時間がかかる工程」を通し、一つひとつ丁寧に手作りした財布やバッグなどを販売しています。

商品の素材には「天然皮革」を使っていますが、この素材自体は「宝石のように非常に高価な材料」というものではありません。それ以上に複数の職人による熟練した技術によって、商品に高い希少価値が付いているのです。

単に値段が高くて、商品数や販売期間が限定されているだけだとお客さんは納得しません。しかし、どのようなこだわりがあるのか明確に伝えるだけでも、商品への付加価値が大きく高まるようになるのです。

在庫切れを起こし、商品価値を高めることも可能

また、場合によってはわざと在庫切れを起こし、商品価値を高めるというマーケティング手法も行われており、これにも限定性が大きく関わっています。

人気商品の場合、かなりの時間を待たされることがあります。リアル店舗でもネットショップでも、たまに「この商品は〇ヶ月待ちです」と書かれていることがあります。

ただ、不思議ではないでしょうか。多くの注文が入るのであれば、大量生産すればいいだけです。大量の注文が入ってうれしい悲鳴をあげているのであれば、大量に作り置きしておけば問題を解決できます。

お客様にとって、商品はできるだけ早く欲しいです。何ヵ月も待つのであれば、「やっぱりいいや」と思う人がたくさん出てきます。これが、本当は売れるはずだった商品が売れないという機会損失につながります。

ただ、狙いはそこではなく「店の価値を上げる」ことにあります。

1日の生産数をわずかに限定し、そこに大量の注文が入るようになれば数ヵ月待ちの商品くらいすぐにできます。

そうなると、多くの人は「そこまでの人気商品があるのなら、他の商品も良いのだろう」と思ってしまいます。なんだか、その店にある商品が全て良い物であるかのような錯覚に陥ってしまいます。

誰でも買えないからこそ価値があるわけです。店に何ヵ月も先でなければ購入できない商品があるのは、それだけで大きな価値になるのです。

これについては、ラーメン店がわざと店を狭くしているのと同じ原理です。人気ラーメン店であっても、店舗面積を大きくすれば客数は激減します。店内を狭くし、そこに行列を作ることで希少性を打ち出すことに大きな意味があるのです。

ウソの理由を使い、希少性を高めると信頼を失う

ただ、希少性の原理を活用するとき、何でもいいから希少性を付ければ良いわけではありません。特に、「ウソの希少性」を打ち出すのは避けなくてはいけません。

ウソの希少性とは、例えばずっと売り続ける商品なのに、「限定300個までの販売です」と言いつつも販売を続ける手法・考え方になります。

つまり、「実際には希少性がないものなのに、希少性があるかのように見せかけて人をだますこと」がウソの希少性です。

ウソの希少性を打ち出して商品販売をした場合、ウソがお客さんにバレてしまえば、商品が売れなくなるだけでは済みません。多くの見込み客から一気に信頼を失うことにもつながり、結果として売上が大幅に下がるようになります。

過去の事例として、有名な大手家電量販店で行われた「電子マネーの20%還元キャンペーン」があります。このときは電子マネーを使うことで20%引きにしたのですが、キャンペーン開始当日に「一部製品を値上げし、実質的に通常での購入と値段が変わらなくなった」という事態が発生しました。

20%引きで商品を買えるため、とてもお得なキャンペーンとして見られて多くの人が注目していました。しかし、キャンペーン当日での値上げにより、大勢の見込み客に不満と不信感を抱かせることになってしまいました。

中には、SNSなどに「この大手家電量販店の商品を買うべきではない」と不満の声を投稿する人も出てくるほどでした。実際のキャンペーン画面が以下になります。

この大手家電量販店が、最初から「キャンペーン期間中の商品の値上げ」を考えていたかは不明です。しかし、見込み客からすれば「キャンペーンに踊らされて、通常と変わらない価格で商品を買わされそうになった」と感じられ、この大手家電量販店に不信感を抱いてしまいます。

当然、お客さんからの信頼を一気に失い、今後一切商品を買ってもらえなくなる恐れがあります。

さらに、あまりにもひどい手口であった場合、「消費者を欺いた違法な詐欺行為」にあてはまる可能性もあります。希少性の原理を活用するにしても、意図していたかどうかに限らず、ウソの希少性を用いるのは絶対に避けなければいけません。

営業や恋愛など、マーケティング以外でも広く用いられる

また希少性の原理は、マーケティングだけでなく、営業や恋愛などでも有効な心理学のテクニックとして活用されています。

例えば訪問での営業であると、顧客に対して「いまお申し込みいただくと、通常価格よりも安くご提供できます。もし、いまお申込みいただけなかった場合は、他のお客様に勧めてしまうため、特別価格ではご提供できなくなります」と伝えると効果的です。

顧客は「いまでないと安く買えないなら、後悔しないためにいま買っておいた方がいいかもしれない」と考えて、営業マンからの購入を決断する可能性が高まります。

また恋愛であれば、異性とデートの約束をしたいとき、その異性に「日にちはいつでも空いているよ」と告げるのではなく、「いま忙しくて、来週の土曜日くらいしか空けられそうにないよ」と伝えるべきです。

これによって、伝えられた相手は「気になっているこの人とはいつでも会えるわけではないから、来週の土曜日は空けておこうかな」と考え、実際にデートの約束に応じてくれる可能性が高くなるのです。

限定性というのはマーケティングに限らず、営業や恋愛などのさまざまな場面に役立つ心理テクニックです。とても強力な手法でもあるため、積極的に活用しましょう。

希少性の原理はスノッブ効果とも呼ばれる

なお、希少性の原理は「スノッブ効果」と呼ばれることもあります。スノッブ効果とは「他の多くの人が所有しているものであるほど、希少価値がなくなっていく」というものです。そのため、スノッブ効果は希少性の原理と意味が同じだと考えれば問題ありません。

希少性の原理については、スウェーデンの学者であるグスタフ・カッセル氏によって名付けられました。一方でスノッブ効果はアメリカの学者であるハーヴェイ・ライベンシュタイン氏が付けました。

名付けた人が違うだけであり、両者の意味は同じです。手に入りにくいものに対して価値を感じることについて、マーケティングではスノッブ効果という言葉が使われることもあるため、混乱しないように認識しておくといいです。

あらゆる実験・研究でも有効な希少性の原理でビジネスを加速させる

希少性の原理とは、「求められている量に対して供給できる量が少ない」など、希少なものであるほど価値が高まる心理現象です。あらゆる実験・研究で効果が明らかになっている心理学であり、マーケティングでも広く用いられています。

希少性がある商品ほど、人の目に留まりやすかったり高額でも売れやすくなったりします。逆に、希少性がなくていつでも買える商品ほど、「どのタイミングでも買えるなら、いまは買わなくても良い」と思われ、売上は乏しくなります。

そこで、商品価値を高めて購買意欲を掻き立てるように仕向けましょう。具体的な手法としては「数の限定」「期間の限定」「特典の限定」があり、通販番組や家電量販店などのさまざまな場所で頻繁に活かされています。

希少性の原理には理由付けが不可欠ですが、ウソの限定性ではなく、必ず正直な理由付けをしましょう。そうすれば、あなたの商品やサービスの内容を一切変えることなく、大きな付加価値を付けて売れやすくすることが可能になります。

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