起業家や経営者を含め、ビジネスをしていると必ず失敗する場面に出くわします。どれだけ大成功を収めている起業家であったとしても、その裏には数えきれないほどの失敗があります。

このとき、ビジネスなのでそれなりに頑張って事業に注力する必要があります。ただ、うまくいかな事業に対して、あなたはどのように取り組むでしょうか。「これだけお金や労力をかけたし、いまさら引き返せない」と考えてしまうでしょうか。

これをマーケティングの世界ではサンクコスト効果(サンクコストの呪縛)といいます。もったいないという心理が働き、ダメなことに時間やお金を費やすことでさらに失敗が加速していくのです。

心理学ではコンコルド効果とも呼ばれますが、「サンクコスト=コンコルド効果」だと考えれば問題ありません。そこで、マーケティングで重要な「サンクコストの罠を回避する思考法」「コンコルド効果をビジネスにうまく取り入れる方法」について解説していきます。

コンコルド効果とは何か?歴史から学ぶビジネス

かつて、イギリスとフランスとの共同で開発され、マッハ2の飛行速度で飛べるコンコルドという大型の旅客機が存在しました。コンコルドの開発には多額の資金が投下され、英仏の両国ともにコンコルドの完成に向けて努力していました。

ところが、コンコルドの開発が進むにつれて雲行きが怪しくなってきます。なんと、コンコルドを完成させても、投資した分の予算を取り戻せないことが発覚したのです。

  • 定員を100人くらいしか乗せられない
  • 燃費が非常に悪い
  • 値段が異常に高額になる(ファーストクラスよりも上)

こうしたことが明らかになったものの、イギリスとフランスはすでに莫大な資金を投下してしまったため、引くに引けない状態にありました。そのため、損をすることがわかっていたにも関わらず、コンコルドを完成させるようにしました。

実際にコンコルドを就航させてみると、予想されていた通り、飛ばせば飛ばすほど収益がコストに見合わなくなっていきました。250機で採算が取れると言われている中、16機ほどの生産で終わってしまいました。以下が実際のコンコルドです。

コンコルドの研究開発費は4,000億円ほどでした。この時点でプロジェクトを止めていればよかったのに、何とか元を取ろうと引きのばした結果、赤字額は数兆円までになってしまったのです。

そして2003年、コンコルドは運航中止となりました。ここから、大きな労力を費やしたがために強く執着してしまい、損害が出るとわかっても引くことができなくなる現象をコンコルド効果といいます。

ビジネスではサンクコスト(埋没費用)の無視が重要

こうした商業的な大失敗から、どのようにビジネスをしなければいけないのか学ばなければいけません。このときサンクコストとは、「それまでに使ってしまった費用」のことであると考えてください。

多くの人は、過去に支払ったお金に価値があると考えます。例えば、新たなビジネスを立ち上げるために設備投資を行い、既に1000万円をその事業のために使ってしまいました。このとき、たとえ成績が悪かったとしても、「既にこれだけお金を使ったのだから、後には引けない」と多くの人は考えます。

立ち上げたビジネスを中止しても、使ってしまった1000万円は返ってきません。このときの1000万円がサンクコスト(埋没費用)です。

ただし、ビジネスではサンクコストを意識してはいけません。過去のお金は戻ってこないからです。サンクコストの呪縛にかかると、その瞬間に身動きが取れなくなってしまいます。単なる授業料だと割り切って、上手くいかないビジネスはスパッとやめてしまう方が賢明です。

過去に注ぎ込んだお金のことは忘れて諦めるという選択が正しいです。

もったいない考えを捨て、ゼロベース思考をもつべき

ただ重要なのは、埋没費用の分は無駄に終わるかもしれませんが、「それまでに費やしてきた努力は無駄にならない」ことを認識することにあります。

先ほどのようなに1000万円の埋没費用を出した場合であっても、「この方向性でビジネスを動かせば失敗する」ことを学べたわけです。この経験を活かして、他のことで成功すれば問題ありません。

一見すると、埋没費用は無駄のように思えます。しかし、実際はそうではありません。そのための経験や努力は将来必ず役に立ちます。埋没費用は惜しまずに見切りをつけ、失敗経験を将来に活かすことが最も重要です。

なお、私も起業して会社を経営していますが、当然ながらいくつも失敗をしたことがあります。例えば、以前に私は青汁サイトを運営しようと考えたことがあります。実際のWebサイトが以下になります。

青汁のサイトでアクセスが集まれば、恐ろしいほど儲かることが既に分かっています。青汁サイトで月500万円以上の利益を出している人はたくさんいます。

ただ、実際にやってみると青汁サイトは世の中に腐るほど存在し、さらには差別化が非常に難しいので独自のサイトを構築できず、アクセスはなかなか集まりませんでした。そのため、外注ライターさんには150万円ほどの費用を使い、1年ほどかけていましたがスッパリ諦めて撤退することにしました。結果が出ないからです。

ここから、「たとえ儲かる分野であっても、ビジネスでは競合が少ないジャンルを攻めるべき」「自分オリジナルで勝負できる分野でなければいけない」など、ビジネスで成功する方法を学ぶことができました。

コンコルドと同じように、私の青汁サイトは商業的には失敗でした。ただ、その経験を活かせばいいのです。回収不可能なものに執着するより、ゼロベース思考(最初からなかったもの)と考えて将来を見据えた方がビジネスはうまく行きます。

サンクコストの罠に陥る事例はたくさんある

なお、こうした具体例以外にもサンクコストの呪いにかかってしまう事例は意外と身近に存在します。例えば、以下のような具体例がこれに該当します。

・資格を活かそうとする

日本人は資格取得が大好きです。また、資格を取った後は何とかして資格を活かして活躍しようとします。資格を取るには当然ながら多くの勉強をして、予備校に通うなどお金もかけなければいけません。「資格を使わないともったいない」と考えてしまうのです。

例えば医師や弁護士など、資格の範囲内だけで活躍しようと考える人が大半です。これも、サンクコストの罠にかかっている事例だといえます。

参考までに、私は薬剤師資格を保有していますが、現在は薬剤師免許をまったく活かさずにWebサイト運営のビジネスばかりしています。資格を活かしていませんが、それでも後悔していません。

・食べ放題、飲み放題

誰にでも当てはまる身近な例であれば、食べ放題や飲み放題もサンクコスト(埋没費用)に該当します。既にお金を支払っており、後はいくらでも食べて問題ありません。

ただ、このときのもったいないという思考によって食べ過ぎてしまい、後で後悔することはよくあります。

認知バイアスが働くと、正しい結論から遠ざかる

人間というのは、ときとして正常な判断がきなくなります。サンクコストの呪縛がこの代表であり、非合理的な判断をすることがよくあるのです。この現象を認知バイアスといいますが、コンコルド効果を含めて「正常な判断をすることができない状態」が認知バイアスになります。

例えば、宝くじやギャンブルなどは100%の確率で運営側が勝つようになっています。それにも関わらず、なぜ多くの人がこうしたギャンブル(パチンコを含む)をするかというと、以下のような理由があります。

  1. ギャンブルで勝てる確率が低いのは知っているけど、買えば当たるかもしれない
  2. 今までずっとやり続けて負けてきたので、今度こそ当てて負けを取り戻したい

「1」について、人は物事を自分の都合のいい方向に考えてしまう傾向があります。例えば、車を運転している際にも、自分は絶対に事故に遭わないと心のどこかで思ってしまうのです。

そのため、パチンコを含めギャンブルをする場合には、「自分には当たるのではないか」「ギャンブルでもやらないと分からない」「宝くじは当たらなくても、当選日まで夢が見られる」などのように考えてしまい、ギャンブルの絶望的な成功確率を無視してしまうのです。

「2」についても、宝くじを買い続けたことでお金の損失が膨れすぎ、サンクコストの罠にかかるために生じます。認知バイアスが働くことで、人は偏った考え方に陥ります。

起業家や経営者を含め、コンコルド効果はすべての人に関係するようになります。失敗なしに事業を成功さえる人はいないため、「それまで頑張ってきたものを捨てる」という選択をしなければいけません。

そうしたとき、もったいないと考えているとこうした認知バイアスにかかり、ビジネスで失敗を続けるようになります。ビジネスマンとして仕事をするとき、こうしたことを学んでおかなければいけません。

機会費用(オポチュニティーコスト)との違いは理解しておくべき

なお、サンクコストを無視するというのは「やらないことを決める」ことにもつながります。何をしないのかを決めれば、それだけビジネスが円滑になります。

例えば英語の勉強を続けている人であれば、「これだけずっと勉強しているから」と考えて同じように学び続けます。もちろん学ぶこと自体は素晴らしいですが、実際のところそうした勉強を止めて専門家(英語を話せる人)に仕事を依頼したほうが早いことは多いです。

私であれば、海外でもビジネスをしています。具体的には、ミャンマー人にサイト運営を手法を教えています。英語でサイト記事を書かせ、そこに広告を貼ることでドルで広告料をもらいます。ドルでお金が入るため、ミャンマー人の彼らにとっては非常に大きなお金になります。

以下が実際に教えたときの様子です。

私の英語能力は低く、大学受験で完全に止まっています。しかし、それでも問題なかったのは英語を話せる人を一緒に連れて行ったからです。彼らに依頼することで、すべての問題を一瞬で解決することができました。

もし海外ビジネスをするために私が本気で英語の勉強を始めていれば、会社の事業に割く時間が少なくなって将来の売上額は少なくなります。つまり、それだけ損失が生まれるのです。これが機会損失です。

このとき、ファイナンス理論では「別の選択をすることによって生まれたコスト(今回であれば、英語の勉強をしたことで発生した、本来であれば生まれていたであろう売上がなくなること)」を機会費用(オポチュニティーコスト)といいます。

「時は金なり」という言葉は有名ですが、これは機会損失のことを指しています。無駄に時間を過ごす人は多いですが、実はこれは大きな損をしているといえます。何も失ったようには思えませんが、「有効に活用していれば、本来は得られていたものを得られなかった」という損失が発生するのです。

何かに注力して時間を割いていたとしても、ビジネスでは「他の人に頼めばすぐに問題を解決できる」ことはよくあります。そうしたとき、サンクコストの罠にはまらず作業を中断し、他の人に依頼してしまいましょう。そうすれば機会損失(機会費用:オポチュニティーコスト)を回避できるようになります。

サンクコストを営業やマーケティングへ応用する

なお、こうしたサンクコスト(埋没費用:コンコルド効果)は営業やマーケティングに応用させることができます。自分がサンクコストの呪縛に捉われないようにするのは当然として、さらにビジネスの場面で使うようにするのです。

例えば取引先の契約書にサインをする前、次のようなことを相手先の営業マンに伝えます。

別の取引先から不渡りを食らって当社の経営が大打撃を受けました。そのため、申し訳ないのですが、今回の契約をキャンセルさせてください。

こうなると、当然ながら取引先の営業マンは大きく動揺します。あなたの会社との契約のために何度も会社に訪れるなど、あなたに納得してもらえるようにくり返しアプローチしてきたからです。

それまで大きな労力をかけているほど、何とかして契約を取りたいというサンクコストの罠にかかるようになります。その場合、値下げ要求を含めてさらに良い条件を引き出せるようになります。

多大な労力を費やしてきたときほど、「目的が果たせなくなるかもしれない」という問題に直面したとき、人は冷静な判断ができなくなります。サンクコストをうまくビジネスに取り入れることも視野に入れましょう。

また、以下のような場面でもサンクコストが関わっています。ビジネスで応用されている場面は意外とたくさなります。

・次回割引のクーポン券、回数チケット

飲食店やスーパーなどであれば、次回割引のクーポン券をもらうことがあります。こうした券ががあると、使わないともったいないように思ってしまいます。

同じように、回数チケットが余っていると使わないと損をしているように思います。そのため、結果として何度も出向いてしまいます。

・〇円での送料無料や割引

リアル店舗でもネットショップでも「3点のまとめ買いで10%引き」「5,000円以上で送料無料」などの文字を見ることがあります。これも、どうせ買うならお得でなければもったいないという心理を引き出すためのものです。

コンコルド効果というのは、注意深く見ればあらゆる場面で活用されています。そこで、あなたも自分のビジネスで活かすようにしましょう。

人生の時間やお金のロスは無視し、撤退時期を見極めるべき

ビジネスに失敗はつきものです。このとき、実際にやってみなければいけません。事業で成功するコツの一つとして、「撤退する時期を見極める」ことがあります。

コストの回収が無理だと分かれば、どれだけその事業に人生の時間や労力、お金をつぎ込んでいたとしても、スッパリと諦めて撤退するのが正しい選択です。もったいないと考え、ダラダラと先延ばしを続けていると、コンコルドのように損害ばかりが膨らむようになります。

仕事をするうえで重要なのは、過去の損失は考えないことがあります。確かに費やしてきた労力は大きいかもしれませんが、ゼロベース思考で物事を捉え、すぐに諦めて考えを切り替えた方がビジネスはうまく行くのです。

行動経済学や心理学などで有名なサンクコスト(コンコルド効果)ですが、マーケティングとしてビジネスを動かすときに必ず考えなければいけない事柄でもあります。サンクコストの罠に陥らないようにして、ビジネスを動かすようにしましょう。

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