会計(アカウンティング)と財務(ファイナンス)の違いとは

自らビジネスを動かす立場になると、勉強するべきことがたくさん表れます。その中の1つとして、ファイナンスがあります。日本語では財務と表現されます。

会計は英語でアカウンティングですが、日本語表記で「会計」と表されることの方が多いです。一方、ファイナンスは一般的に、財務よりもファイナンスという表記がされます。

「経営を行うことで会社の方針を決める」のが社長の仕事であるため、多少の会計知識を身に付けることは重要です。それにプラスして、ファイナンスの知識も学ぶといいです。

それでは、会計とファイナンスの違いは何でしょうか。まず、この違いから理解していきます。ほとんどの人が意識していませんが、両者は明確に異なります。そこで、どのような違いがあるのか確認していきます。

利益を扱うのか、キャッシュ(現金)を扱うのか

会計は利益を扱います。一方、ファイナンスはキャッシュ(現金)を扱います。この点が最も大きな違います。

会社の儲けを示す指標の1つに利益があります。利益は「売上 - 経費 = 利益」で表されます。会社の使命は利益を出すことであり、利益の出ない会社は迷惑でしかありません。利益のない会社は相手先や銀行、従業員などあらゆる人に対してお金を支払えないからです。

そのため、利益を扱う会計を理解することは、会社経営を行う上で必須であるともいえます。利益の重要性が分からない人が会社を運営すれば、先行きはかなり怪しくなります。

ただし、利益だけを追いかけていてもダメです。経営をする上で利益は大切ですが、「手元に現金があること」はもっと重要です。「資金繰りが厳しい」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは手元に現金がない状態を指します。

会社が倒産するのは赤字だからではなく、手元に現金がなくて相手先や銀行への支払いを約束の期限内に支払えなかったときに起こります。会計では利益を扱うため、それだけではどれだけの現金が会社内にあるのか把握できません。そこで、キャッシュの見える化を図るのです。

キャッシュフローという言葉を聞いたことがあると思いますが、これは現金の流れを示します。名前の通り、企業活動によって生じたお金がどのように流れているのかを示した指標です。

なお、利益額を増やすなど、会計ではある程度の操作をすることができます。しかし、現金は操作できません。そこにある現金が自然に増えることはないのです。どれだけ頑張ろうが現金の額は変わらないため、「キャッシュは嘘をつかない」といわれています。

「過去」を扱うのか、「未来」を扱うのか

会計とファイナンスの違いとして、他には「過去を扱うのか、未来を扱うのか」というものがあります。会計は過去を扱い、ファイナンスは未来を扱います。

会計では、過去の業績をみます。企業の決算が終わった瞬間の日の成績が決算日であり、どの会社でもその時点の決算書の作成は必須となります。

決算日が近づくとどの企業もあわただしくなるのは、会社の成績を出す期限が間近に迫っているからです。試験日が近くなると、ようやくラストスパートをかけるのと同じです。

会計での決算書では損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などが出されます。ここに書かれている数字は過去の決算日での数値を表したものであり、現在の数字ではありません。

しかし、会社経営で過去の話ばかりしても意味がありません。社長にとって重要なのは、「現在の状況から未来に向かってどのような判断をするか」だからです。そこで、未来を扱うファイナンスが重要になります。

経営者はお金を使って投資を行い、このときの投資がどれだけのリターンを生み出すのかを考える必要があります。このときにファイナンスを用います。

過剰な投資を行えば、会社の体力が一気に減って何もできなくなります。しかし、投資に対して慎重になりすぎてチャンスを逃してはいけません。社長は「現在の状況」と「未来のリターン」を考えながら判断するだけの能力が求められます。

このように、会計とファイナンスにはそれぞれ違いがあります。この違いを認識すると、ファイナンスを少しずつ理解できるようになります。

現在価値と将来価値から考えるリターン(報酬)の考え方

基本的には、「会計=決算書の内容をどう読み解くのか」だと考えるようにしましょう。損益計算書や貸借対照表(バランスシート)などを確認して、過去の状況を見るのです。一方でファイナンスの場合、将来を取り扱うので現金や株、保険などあらゆることを考えるようになります。

例えば、ファイナンスでよく用いられるものの一つに「現在価値と将来価値」があります。同じ金額であっても、ファイナンスでは現在の価値と将来の価値は異なります。「いま現在の100万円」と「1年後の100万円」では価値が変わるのです。

確かに、金額の大きさだけをみれば100万円で同じです。しかし、ファイナンスでは異なるものとして捉えます。

例えば運動部に所属しているあなたは部活で汗をかき、喉がカラカラです。このとき、先生がクーラーボックスいっぱいにジュースを入れてもってきました。どうやら、無料で配ってくれるようです。ただし、先生は次のような条件をつけました。

  1. 今すぐに受け取る場合はジュース1本だけ
  2. いま我慢して、グラウンド3週してきた人はジュースを5本までとれる
  3. ただし、早い者勝ちなのでジュースがなくなったら終わり

あなたの喉はジュース1本では満たされません。しかし、グラウンド3週した後にもらうジュース5本であれば満たされます。この場合、あなたならどのような行動を取るでしょうか。

不確かさや待つことはリスクになる

これには答えがありません。人によって行動が違います。まず現在価値を考えると、当然ながらジュース1本の価値はそれ以上でもそれ以下でもありません。

それでは、「グラウンド3週によってジュース5本」という将来価値を見据えれば良いかというと、必ずしもそうではありません。

ランニングしている間に他の人が「ジュース1本」をたくさん選んだ場合、早い者勝ちなので帰ってきたころにはジュースがなくなっているかもしれません。

この場合、なにも得ることができません。その反対にグラウンド3週を選んだ場合、競争に勝ててジュース5本を勝ち取れるかもしれません。

結局のところ、将来はどうなるか分からないのです。このように、未来には不確かさのリスクがあります。また「待つことのリスク」もあり、実際に時間が経つだけジュースの本数は減っていきます。

世の中の現象を観察すると、現在価値と将来価値は大きく異なることはよくあります。また、ここで述べた「不確かさの対価」と「待つことの対価」は人によって感じ方が違います。

先ほどの例であれば、走ることが好きですぐにランニングを達成できる人であれば、ジュース5本を選ぶでしょう。しかし足が遅いために1本でもいいので確実に手に入れたい人であれば、ジュース1本を選ぶはずです。

いずれにしても、このときは無意識のうちに全員が将来価値から「不確かさの対価」と「待つことの対価」を差し引いて行動しています。

ファイナンス理論での現在価値と将来価値

それでは、もっとファイナンスらしく考えてみましょう。ファイナンスであれば、株や投資、保険などを考えます。

先ほどの通り、いま現在100万円と1年後の100万円では価値が異なります。例えば、100万円を国債として1年間預ければ、利子がついてもっと膨れ上がります。

このとき、返ってくるリターン(報酬)は「将来価値 - 現在価値」で表すことができます。国債として投資する場合であれば、「将来価値(国債に1年間投資することで得られる額) - 現在価値(国債に投資した瞬間の額)」が得られるリターンです。

ただ、日本国債ではなく新興国の国債に投資した場合はどうでしょうか。途上国だと年利7~8%以上になるのは普通です。

ただ、当然ながら日本国債に比べると不確かさのリスクがあります。しかも、このときは預ける年数が長くなるほどリスクは大きくなります。

しかし、成功すれば得られるリターンも大きくなります。そのため、リターン(報酬)は以下の式で表すことができます。

  • リターン(報酬) = 不確かさの対価 + 待つことの対価

要は、何かのリスクを負って将来のリターン(報酬)を得る場合、この大きさについては「不確かさの対価(リスクを負うことへの見返り)」と「待つことの対価(時間が経つことへの見返り)」を考えればいいです。

「不確かさの対価」や「待つことの対価」が大きいほど、得られる報酬は膨れ上がります。このように考えていくのがファイナンスになります。

会計(アカウンティング)と財務(ファイナンス)を理解する

会計と財務は明確に異なります。アカウンティングだと、過去を取り扱うことになります。つまり、決算書で考えるのが会計だと考えるようにしましょう。

特に重要になるのが損益計算書や貸借対照表などになります。こうしたものを読み解くのが会計であるため、概念としては特に難しくはありません。

一方で財務となると、あまり馴染みがないです。ファイナンスが現金を取り扱い、将来を見据えるものとはいっても、何のことだかよく分かりません。そこで、ここではファイナンスの例として現在価値と将来価値について取り上げました。

現在と将来では現金の価値が異なります。これと同じように、将来を見据えて現金がどうなっていくのかを考えるのが財務です。現金価値や株式投資、保険を含め、将来リスクを見据えながら企業経営していくのに必要なツールがファイナンスになります。

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