管理職マネージャーなど、上の立場になるとリーダーシップやマネジメントなどの言葉を頻繁に聞かされるようになります。
ただ、実際のところリーダーシップやマネジメントの素質に肩書や役職などは関係ありません。誰であっても、リーダーシップやマネジメントの能力を発揮することができます。
これについては、リーダーシップとマネジメントにどのような違いがあるのかを学ぶことで、より深く理解できるようになります。両者は混同されがちですが、実は意味が異なります。これらを理解すれば、管理職マネージャーの立場にある人は、より仕事を進めやすくなります。
そこから、どのようなリーダーやマネージャが結果を生み出せるのかを知れば、よりビジネスの場で活躍できるようになります。そこで、ここでは「管理職が理解するべきリーダーシップとマネジメントの違い」について確認していきます。
先導者がリーダーとしての役割を果たす
まずリーダーシップというのは、人を特定の方法へ導くことを指します。
例えば、あなたが海外旅行を企画するとします。このとき一人旅の場合はリーダーシップに関係なく、勝手に旅行へ行けば問題ありません。ただ、まったく計画のない段階から何人かを集めて旅行に行くとなると、周囲への声掛けが必要になります。
このときは「海外旅行へ参加するメリット」「どこに行くのか」「どのような楽しみがあるのか」について友人にプレゼンテーションをします。プレゼンの方法は電話かもしれませんし、メールで伝えるようになるかもしれません。いずれにしても、このときは人を動かすだけの力量が試されます。
そうして海外旅行へ行きたい人が何人も集まり、実際に成立するとなると、その人はリーダーシップ性を発揮したといえます。
リーダーというのは「何か目標を設定し、それに向かって人を導く先導者」だといえます。リーダーシップ性がなければ人が集まらないため、人を惹きつける能力が必要になります。そのためリーダーに肩書は関係なく、どれだけ人を先導できるのかが重要になります。
旅行や飲み会など、イベントを開催するときはリーダーとなる人間が必要になります。このときは、最初に言いだした人が自発的にリーダーになります。
これがビジネスでの話となると、会社での理念や目指すべき姿を設定するときにリーダーシップ性が必要になります。
そのため経営者であれば、その全員にリーダーシップ性が必須です。また管理職マネージャーであっても、「自分の部門をどのようにしたいのか」について考え、部下に提示する必要があることを考慮すると、やはりリーダーシップ性が求められます。
組織をまとめるのがマネージャーである
それでは、先ほどの海外旅行の話に戻しましょう。実際に外国へ行く場合、準備が必要です。「ホテルはどこにするか」「持ち物としては何が必要か」「どこを見て回るか」などを計画し、実行へと移さなければいけません。
このように、定めた目標を達成するための準備をして、計画を立てることをマネジメントといいます。海外旅行であれば、一緒に旅行する全員が楽しい思いをして、安全に自国へ帰るまで面倒を見るのです。
このとき忘れ物をした仲間がいればフォローを行い、バスや電車に遅れそうになったときは代替案を考えるようにする必要があります。
会社組織でのマネージャーであれば、「定めた目標をどのような方法によって達成し、その計画を立案するのか」がマネジメントになります。適切にマネジメントを実践しなければ、いくら良い目標設定をしても無意味なのです。
リーダーシップとマネジメントの両方が必要になる
このように意味の異なるリーダーシップとマネジメントですが、なぜ混同されるのかというと、人を管理する立場にある人は両方を要求されるからです。
海外旅行の例であれば、いくら海外旅行へ行こうと説得したとしても、「準備するものが分からない」「どこへ行けばいいのか不明」「移動手段も理解していない」という状況では、果たしてその人に付いて行きたいと思うでしょうか。間違いなく、大きな不安を感じるのでその人の提案を断ると思います。
このように考えると、マネジメント能力のない人では、リーダーシップ性を発揮できないことが分かります。適切な計画を立てることができるからこそ、人が付いてくるようになるのです。
もちろん、人を管理するマネジメント能力に優れているだけでも組織は成長しません。与えられた仕事だけをこなすのではなく、人を先導して引っ張って目標を達成させるからこそ、仕事によって組織で大きな成果を出せるようになるのです。
ビジネスシーンにおいて、経営者だけでなく、管理職マネージャーであってもリーダーシップとマネジメントの両方の能力を発揮しなければいけません。
経営者は会社全体のリーダーであり、マネジメントを行います。一方で管理職マネージャーであれば、自分の部門でのリーダーであり、マネジメントを実行しなければいけません。管理する範囲が違うだけであり、その役割は同じなのです。
なお、こうしたリーダーシップ性やマネジメント能力は旅行や飲み会の幹事でも磨くことができます。前述の通り、役職や肩書は関係ないからです。
ビジネスにせよプライベートにせよ、一つの目標を提示して人を巻き込み、そのための計画立案や人の行動管理を経験してみましょう。そうして高いリーダーシップ性とマネジメント能力を発揮すれば、気づけば多くの人が付いてくるようになります。こうして、組織全体で大きな成果を出すことを考えるのです。
結果を出すリーダーやマネージャーの心構えと条件
それでは、どのようにしてリーダーやマネージャーとして成果を出せばいいのでしょうか。
組織で仕事をするとなると、リーダーやマネージャーとして部下を引っ張っていかなければいけません。起業して一人でビジネスを動かしている人であっても、他の人を巻き込んでビジネスを組み立てていく必要があります。
そのようなとき経営者・幹部であれ、部長や課長クラスのマネージャーであれ、結果を出せるリーダーとして機能しなければいけません。
このときのリーダーに必要な考え方として、「自分が率先して動くことで、結果を出してはいけない」ことがあげられます。組織に属する部下(社員)の全員が結果を出すことにより、一人だけの力よりも大きな達成へと導けるマネージャーが本物だといえるのです。
ただ、そのためには「結果を出す優秀なリーダー・マネージャーが、どのような心構えで部下と接しているのか」を理解しておく必要があります。こうしたリーダーの条件を知った上で実践することが、組織の活性化につながるようになります。
部下に完璧・完全を求めてはいけない
多くのリーダーが犯してしまいがちな間違いとして、部下に完璧・完全を求めてしまうことがあげられます。資料作成にしてもプレゼンテーションにしても、「自分の期待している成果物が完璧に出来上がる」と考えてしまうのです。
ただ、そうしたマネージャーによって組織が育つことはありません。まず、人間である以上は誰もが「不完全さ」をもっていることを認識する必要があります。
あなたであっても、最初からすべてを行えるようになったわけではないはずです。例えば自転車に乗るとき、一回も転ばずに自転車に乗れるようになった天才はいません。人間は失敗を繰り返すことによって、次にどのように挽回すればいいのかを考えるのです。
もし、最初から完璧なものが仕上がってくることを期待して、それと違ったときに怒るようなマネージャーであれば、部下は萎縮してしまいます。そうなると部下は失敗を恐れるようになります。
本来、失敗を繰り返しながら成長するのが人間であるにも関わらず、失敗を恐れるようになると挑戦しなくなり、結果として成長できなくなります。
これを避けるため、「部下にとってのベストを尽くす」ように指導します。つまり、部下が考えるその時点での最善を行わせることにより、仕上がってきた結果に対してアドバイスをするのです。リーダーというのは、「部下の行動を軌道修正して、良い方向へと導く」ことが大きな仕事だといえます。
優秀なリーダーは決してあきらめない
またマネージャーとして人を指導する立場にある人であるほど、一つの目標を信じて決してあきらめてはいけません。
自分自身に成功の見通しが見えていない状態であると、部下まで不安になってしまいます。一方、たとえこれまで達成したことがない事業であり、根拠がなかったとしても「必ずやり遂げる!」と言い放つことのできるリーダーであれば他の人がついてきます。
例えば、「I have a dream.(私には夢がある)」の演説で有名であり、ノーベル平和賞受賞者でもあるキング牧師は有名です。
彼はアメリカで当時普通だった黒人差別について、「差別がないアメリカを夢見ている」と当時は誰も考えなかった目標を掲げて活動しました。そうして夢を掲げて行動したからこそ、最初は反対されながらも最後は多くの人の賛同を得ました。
同様に経営者であれば全員が経験していることですが、新たなビジネスをスタートさせるときは必ず周囲の大反対にあいます。
それまで誰もやったことのない事業であるため、周囲の人は成功できる見通しがつきません。そのため、このような反対行動は、ある意味当然のことだといえます。
ただ既に何かしらの成功を収めた人なら、「多くの人が『やめた方がいい』と言うことを実行するからこそ真の成功がある」ことを理解しています。一流の人というのは、必ず周囲の反対を押し切りながら結果として大成功をおさめた人ばかりです。
家族(親、配偶者)、友達、社員など、反対する人はたくさんいます。また、これまでしたことのないビジネスであるほど、「できない言い訳」を簡単に思いつくことができます。その中で大きな決断を行い、あきらめずに継続できるリーダーであると人が付いてきてくれるようになります。
原理原則に従った指導をする
ただ、このときは自分一人の力で行うのではなく、周囲の人を巻き込んでプロジェクトを動かすのが一般的です。そうしたとき、部下に対してどのように指導をすればいいのでしょうか。
良いマネージャーであるほど、原理原則に従っています。原理原則とは、物事の大前提となる事柄を指します。
分かりやすく考えると、例えばダイエットを考えているときに「暴飲暴食をして、毎日寝ながら痩せたい」というのは原理原則から外れています。同じようにスポーツの上達を目指すときに、「週一回の練習でプロになりたい」と考えるのは間違っています。
当たり前のように感じますが、なぜかビジネスの世界になると、こうした原理原則から外れた指導を行うマネージャーであふれかえります。
例えば、部下に対して商品知識やセールススキルを与えずに「商品を売ってこい!」と送りだす人は多いです。多くの人がリーダーシップをまったく発揮できないのは、単純に原理原則から外れた指導をしているからなのです。
真のリーダーであるほど、「本当に必要な部分は何か」を認識することで、それに従った指導を実行します。「良いマーケットはどこか」「部下に自信やスキルをつけさせるには、どうすればいいのか」「次世代の商品は何が必要か」などを考えたうえで、その問題解決に必要な回答をアドバイスしていきます。
当たり前のことを行えていないために、マネージャーとして部下を指導できていない人は多いです。こうした単純なポイントを認識することから、真のリーダーシップが生まれます。
リーダーシップとマネジメントをビジネスで発揮する
このように、組織に良い結果をもたらすリーダーやマネージャーには共通する心構えや条件があります。そこで、正しくリーダーシップとマネジメントを実行に移すようにしましょう。
経営者や役員(管理職)を含め、組織の上に立つ人間はリーダーシップがなければいけません。目標を立て、人を導いていく能力が必要になるのです。また、同時に目標を達成させるために必要なポイントを調べ、準備したうえで部下を動かすマネジメント能力も必須です。
両方がなければ組織は円滑に動きません。どちらか一方が欠けると、社員は誰もついていかなくなるのです。
ただ、ビジネスの場面では正しく部下を指導できていない人が大多数です。そこでどのように行動すればいいのか認識したうえで実行に移せば、組織の成果が見違えるようになります。
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