書籍が売れるために必要な要素として、タイトルと表紙があります。本では、これだけで9割の売れ行きが決まるといわれています。決して、中身が優れているから売れるわけではありません。
もちろん、ベストセラーやロングセラーになるためには中身がしっかりしている必要があります。ただ、1万部くらいまでであれば、中身よりもタイトルと表紙が重要です。
そのため、本の中身については著者と編集者の2人で頑張って作っていきますが、タイトルと表紙については著者側に決定権はありません。一番重要な部分(タイトルと表紙)については、出版社の編集者が独断と偏見で決めます。そのため、「こんなタイトルで発売するのか!」と著者が思うことは頻繁にあります。
本を出す場合、こうした事実を知った上で書籍出版を行う必要があります。本を出すことがどういうことなのかを知ることにより、書籍出版を行うときの心構えができるようになります。
そして、次に重要になるのが「まえがき、あとがき、プロフィール」になります。こうしたことを意識して、執筆を進めなければいけません。そこで、どのようにして売れる本を作ればいいのかを解説していきます。
売れるタイトルや表紙が重要な理由
なぜ、本がタイトルと表紙だけで売れていくのでしょうか。これは、あなたが書店で本を手に取るときの行動をイメージすれば分かりやすいです。
本を買うとき、「この本が欲しい!」と考えて書店に行く人はほぼいません。そうではなく、何となく本屋に立ち寄り、どのような本があるのかを確認したり暇つぶしにのぞきに行ったりする場合がほとんどです。つまり、本を購入するときは衝動買いが主になります。
そのため、本のタイトルはかなりキャッチーなものが多いです。「医者に殺されない47の心得」「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」などはいずれもベストセラーです。ただ、タイトルを読んだときに「オッ」と思わせる文章になっています。
本を出すときは読者の目を引くタイトルや表紙があることで、読者に選んでもらうようにするのです。その後、実際に読者が本を手に取ってパラパラとめくらせるようにすれば、出版社のもくろみ通りになります。
ベストセラーから学ぶ売れる本のタイトル
このとき、売れる本を作るためのタイトルの付け方には一定の法則があります。以下に、どのようなタイトルが売れやすいのかについて、実例を交えて並べていきます。
1. メリットを伝える
- プロ野球を10倍楽しく見る方法
- 頭が突然鋭くなる右脳刺激法
- たった1分で人生が変わる片づけの習慣
2. 断定する
- 統計学が最強の学問である
- 体温を上げると健康になる!
3. 命令する
- 小さいことにくよくよするな!
- 傷はぜったい消毒するな
4. 暴露する
- 医者に殺されない47の心得
- 老化は食べ物が原因だった
- 炭水化物が人類を滅ぼす
5. 数字を使う
- 人は見た目が9割
- 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
- 99.9%は仮説
6. 分かりやすさ第一
- まんがでわかる7つの習慣
- ざっくり分かるファイナンス
- もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
7. 疑問形を使う
- さおだけ屋はなぜ潰れないのか?
- 若者はなぜ3年で辞めるのか?
- 仕事は楽しいかね?
8. 常識の逆を言う
- お金は銀行に預けるな
- 薬剤師は薬を飲まない
- 食い逃げされてもバイトは雇うな
9. 言葉を対比させる
- 話を聞かない男、地図が読めない女
- 金持ち父さん貧乏父さん
- ゾウの時間ネズミの時間
10. ギャップを出す
- 100円のコーラを1000円で売る方法
- ホームレス中学生
- 余命一ヶ月の花嫁
11. 怒りだす
- 就活のバカヤロー
- いつまでもデブと思うなよ
12. ありそうでなかった本
- プラトニック・セックス
- 女医が教える本当に気持ちのいいセックス
- 世界がもし100人の村だったら
13. 質問する
- 人間にとって成熟とは何か
- こんなにヤセていいのかしら
14. AならばB
- 長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい
- 「体を温める」と病気は必ず治る
15. 問題提起する
- 嫌われる勇気
- 置かれた場所で咲きなさい
16. 誰でも簡単にできる
- 巻くだけダイエット
- 人生はニャンとかなる!-明日に幸福をまねく68の方法-
ベストセラーが生まれるタイトルには、一定の法則があります。そのため、タイトルについては必死に考える必要があります。
ベストセラーに似せた決め方だとあまり売れない
ただ、ベストセラーの直後に似たタイトルを出す場合、その本はあまり売れない傾向にあります。
例えば、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」がベストセラーになったあと、実際に同じようなタイトル本と似た表紙の書店にあふれました。しかし、大きなインパクトを残す二冊目の本は現れませんでした。
基本的には、同じ傾向のタイトルの本がたくさんあると読者は慣れてしまいます。そのため、熱が収まったあとや新たな切り口を加えたうえで、タイトルと表紙を練らなければいけません。
しかしながら、冒頭で述べた通り、著者側にタイトルや表紙の決定権はありません。そのため、あなたにこだわりがある場合は最初の段階で編集者と一緒にタイトルと表紙についての打ち合わせをするようにしましょう。
実際、ベストセラーである「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者はタイトルを1年ほど考えたうえで編集者と相談し、本の内容を書き始めたといいます。
参考までに、私の初出版では以下の本を出すことになりました。
この本について、編集者とも話しながら「薬はなぜ効くのか?」「医者は病気を治せない」などがタイトル案として出されました。しかしタイトルの決定権は全て出版社にあるため、最終的には編集者が「なぜ、あなたの薬は効かないのか?」というタイトルに決まったというわけです。
タイトルと表紙の決定は、本を出す段階になって常に悩まされる問題です。タイトルが違えば、本の売れ行きはまったく異なるものになります。そのため、タイトルや表紙に関しては、あらかじめ編集者と綿密な打ち合わせを済ませておくことをお勧めします。
売れる表紙についても作家に決定権はない
前述のように、タイトルと同様に表紙も著者に決定権はありません。本の中身については作家に一任されるものの、売れる表紙を考えるのは出版社の仕事になるのです。
例えば私の場合、薬の本に限らずビジネス書も出しています。以下のように書店で大々的に販売され、1~2ヵ月ほどで3刷までいって増刷を重ね、かなり売れた本になります。
この表紙デザインについても、出版社がすべて決めました。決め方としては、3人のデザイナーに依頼してそれぞれ上がってきた案の中から選ぶという方法でした。
3つの案を見せてもらいましたが、私や担当編集者、編集部長を含め全員一致で「この案がいいね」となって表紙が決まったわけです。
ただ、このとき意見が分かれたとしても作家側ではなく、それまで何百冊もの本を作って売ってきた編集者の意向が採用されるようになります。
本を売るには「まえがき、あとがき、プロフィール」が重要
このように重要な本のタイトルですが、その次に重要なのが「まえがき、あとがき、プロフィール」です。この部分がしっかりしていれば、勝手に本が売れていきます。
実際のところ、本が売れるかどうかについて、中身は関係ありません。ベストセラーやロングセラーを作る場合は中身も必要ですが、前述の通り1万部程度であれば中身に関係なく本が売れていきます。
書店で本を購入するとき、前述の通り多くの人は衝動買いになります。「この本が欲しい」と考えて本屋に行く人はほとんどいません。そのため、書店に置かれた大量の本の中で、まずは本を手に取ってもらう必要があります。
本を手に取ったあと、読者はまえがきやプロフィールを読む
読者がパラパラと立ち読みするとき、どこを読んでいるかというと、それは前述のように「まえがき、あとがき、プロフィール」になります。つまり、本に書かれている概要や言いたいこと、さらには著者が何を考えて本を書いたのかについて知りたいと思っているのです。
これは、あなたが書店で本を購入するときの行動を見ても分かるはずです。
タイトルと表紙の次に重要な個所として、「まえがき、あとがき、プロフィール」があります。作家として本を書く場合、中身に集中してしまいがちです。ただ、本当に重要な部分は中身よりもこうしたサブの部分になります。
なお、本の中で最も重要な部分については、まえがき(または、冒頭の文章)に触れるようにしましょう。ここで出し惜しみをすれば、本が売れなくなります。
「あとがき」についても同様であり、本を読むメリットやすべてのまとめを記さなければいけません。これにより、ようやく読者が中身まで読みたいと思ってくれるようになります。その結果、レジにまで足を運んでくれるようになるのです。
著者は専門性を活かした内容で書くべき
なお、プロフィールも重要ですが、このときはあなたの専門性を記すようにしましょう。
ビジネスの大前提として多少の例外はあるにしても、「素人 → 専門家」という流れでしかお金は移動しません。弁護士や医師など、これらは専門家であるからこそ高額なお金を素人(お客さん)から受け取ることができます。
これは、著者も同様です。あなたが高度な専門知識を有した人であるからこそ、読者はお金を出して本を購入し、時間まで費やして知識を得ようとするのです。誰から見てもあなたが専門家のように捉えられなければ、読者が本を買うことはありません。
そのため出版では、本を書いても問題ないくらいの「資格」が、あなたになければいけません。ここを勘違いしている人は多いです。
例えば私が初出版を行った際、同時期に「歯科医が猫背の治し方を述べた本」「教育学部で生命倫理学を教えている人が、生殖医療について述べた本」が出されていました。ただ残念なことに、これらの本には「どれも売れなかった」という共通点があります。理由は単純であり、プロフィールがダメだからです。
こうした実情があるため、私はそれぞれ「薬学の本」「ビジネス書」という異分野の本を出していますが、プロフィール内容はそれぞれの書籍で大幅に変えています。そうしなければ本が売れないからです。
出版企画書の書き方や出版社への売り込み方の考え方も同じ
ちなみに、このときの考え方は「出版企画書を作成して出版社に自分を売り込む段階」でも役立ちます。
例えば出版したい人の中でも、就活に関する企画書をもってくる人はかなり多いです。確かに、就職活動で苦労した経験があるのは分かりますが、それだけの内容で書かれた薄っぺらい本は誰も買いません。
これが「10年以上のキャリアがあり、1万人以上の学生を指導して、さらに大学からの講演も年50回以上をこなし、内定率80%以上をたたき出している敏腕の就活コンサルタント」であれば話は別です。これくらいの実績がある場合、多くの人は本を買って知識を得たいと思います。
一方、単に就活に苦労した程度の学生の話は誰も聞きたくありません。あなたも、そのような人の本を買うことはまずないでしょう。
ただ、実際に出版企画書を作成して編集者宛てに提出するとなると、この当たり前の思考がスッポリと抜け落ちてしまう人が大半です。
そこで、まずはあなたにその本を書く資格があるのかどうかを考えてみましょう。
プロフィールはストーリー形式で記す
こうした大前提については、必ず理解するといいです。そうしたあと、ようやくプロフィールを書くことになります。
ただ、魅力的なプロフィールに仕上げなければいけません。そこで、プロフィールではストーリーを意識するようにしましょう。その中でも、「伝え方が9割」というベストセラー本のプロフィールがとても参考になるので以下に記します。
上智大学大学院を卒業後、1997年博報堂に入社。もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。ストレスから1年で体重が15%増、アゴも無くなる。
あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。 後に書籍『スティーブ・ジョブズ』に出てくる伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞OneShow Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children) |
このように、プロフィールだけで物語が完成しています。読者にプロフィールを読ませ、それだけでファンになってもらおうとするのです。
このときは逆転ストーリーを用意します。なぜなら、東京大学を卒業して大手商社へ就職したような順風満帆な人の話には誰も共感しないからです。それよりも、ダメダメだった人生から逆転して輝かしい実績を作り上げた人に共感を覚えやすいです。上記のプロフィールも逆転ストーリーになっています。
最初に主人公をどん底に突き落とし、そこから這い上がっていくような物語にするのです。
売れているマンガやドラマ、小説を見ると、すべて逆転ストーリーになっています。これを、本のプロフィールでも活用しましょう。
売れる本の決め方・付け方を学ぶ
ここまで述べてきた通り、本を売るためにはタイトルと表紙が最も重要です。ここを頑張らなければ、読者は書店で本を手に取ってくれません。
そして、次に重要なのが「まえがき、あとがき、プロフィール」です。読者が本をパラパラとめくるときに読む箇所がまえがき、あとがき、プロフィールになります。
これらを含めて仕上げることにより、ようやく売れる本ができ上るようになります。ベストセラーやロングセラーとなるタイトルの決め方には一定の法則があるので、これらを理解しておく必要があります。注意点として、作家にはタイトルと表紙の決定権はないので早めに編集者と打合せするようにしましょう。
また著者として、まえがきやあとがき、プロフィールについては自分で内容を決めることができるため、中身よりもここを最重要視するといいです。「どれだけ優れたまえがきやプロフィールを作れるのか」によって、本の売れ行きが大きく変わるからです。
商業出版を果たすとき、売れるかどうかに大きく左右する要素がタイトルや表紙、プロフィールなどです。これらをどのように設定するべきなのか事前に考え、売れる本を構築するようにしましょう。
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