有名なことわざの1つに、「類は友を呼ぶ」というものがあります。このことわざの意味は、「似た者同士や気の合う者同士は、自然と集まって仲間を作る」というものです。これは真実であり、似た者同士であるほど仲良くなりやすい傾向にあります。
例えば、何らかのセミナーに参加したときに、自分に話しかけてくれた人がたまたま同じ県の出身者であった場合、「どこの市に住んでいるのか」などの会話を交わすようになります。場合によっては、セミナー後に飲みに行くことになるかもしれません。
これは、人は自分と共通点が多い人間に対して好感を抱きやすいからです。この心理現象のことを「類似性の法則」と呼び、このときの共通点は仮想敵(同じ目指すもの)であっても問題ありません。
これらをマーケティングやコピーライティング、営業などで取り入れていれば、ビジネスで大きな成果を生み出せるようになります。そこで、「どのようにして相手との共通点を活用すればいいのか」について解説していきます。
相手に好意を抱かせるため、相手との共通点を探る
もし、特定の人と仲良くなりたい場合、自分とその人との共通点を何とかして突き止めるといいです。例えば、「自分よりもビジネススキルが高い人がいて、その人と仲良くなって人間関係を構築したい」と考えていたとします。
この場合、相手との会話の中で、相手の情報と自分の情報とを照らし合わせながら、共通点を探していきます。
相手との共通点はどんなに薄いものであっても構いません。仮に、その相手が大阪出身者であり、自分が大阪出身者ではなかったとしても、あなたが一度でも大阪に行ったことがあればそこを共通点としてピックアップします。以下のような形になります。
自分:出身はどちらですか?
相手:私の出身は大阪です。 自分:そうでしたか。実は私、大阪が好きでよく旅行に行くんですよ。 相手:そうなんですね。ちなみに、大阪のどのあたりに行ったことがあるんですか。 |
このように、たとえ薄くてもいいので何とかして相手との共通点を見つけ、会話をつないでいきます。そうして会話を進めていくことで相手は自分に対して好感を抱くようになり、相手と良好な人間関係を作ることができます。
他にも相手が京都出身であれば、「自分も関西出身ですよ!」と伝えることは有効です。出会った場所が東京などであれば、同じ関西圏の人間という括りで話をすることができます。共通点は何でも問題ありません。
・嘘の共通点を言ってはいけない
注意点として、相手との共通点で嘘をつくのは避けなければいけません。例えば、大阪に旅行に行ったことがないのに、「大阪によく旅行に行きます」と言ってはいけません。相手に話を掘り下げられたときにボロが出るからです。
そうなると相手に不信感を抱かれてしまい、距離を置かれるようになってしまいます。相手との共通点で嘘をつくのは絶対にやめましょう。
共通点で好感を持たせ、マーケティングや営業で商品購入に結びつける
類似性の法則は、商品販売においても非常に高い効果をもたらします。例えば、ある営業マンがお客様に商品を売るとします。類似性の法則を用いてお客様に好感を抱いてもらいたいと考えたとき、以下のような会話を交わします。
お客様:実は、今年の2月に子供が生まれたばかりなんですよ。
営業マン:実は私も今年の5月に長男が生まれたんですよ。子供の年が近いですね。 お客様:そうなんですか! お子さんの写真見せていただけますか? 営業マン:もちろんです! |
このような会話を進めていくことで、お客さんは営業マンに好意を抱くようになっていきます。お客さんと良好な人間関係を築くことができるため、話がひと段落したところで営業マンは自社の商品についてスムーズに入れます。
もちろん営業の場面に限らず、マーケティングやコピーライティングなどあらゆる場面で共通点が活きてきます。共通点というのは、それだけで相手に好感を抱かせる材料になるのです。
相手の言葉を真似することで、その相手に好意を抱かせる
なお、類似性を効果的に活用する方法としては「真似」もあります。相手の真似をするとは言っても、当然ですが相手を馬鹿にしたような真似をするのではありません。
実際に相手の真似をする場合、できるだけ自然な形で行わなければなりません。もし、相手の真似をしたときにわざとらしさがあると、その相手によっては怒らせてしまう恐れがあるからです。
そこで有効な方法としては、「相手が言ったことをすぐに復唱する」ことがあげられます。相手が何かを話したときに、相手を確認するような形ですぐにその言葉を復唱するのです。
この方法についての身近な活用例として、飲食店があります。ほとんどの飲食店では、食べ物を注文する際、店員はお客さんが注文したものをすぐに復唱します。
その後、さらに「ご注文を確認させていただきます」といい、注文したメニューを再び読み上げます。
これによって、その飲食店に訪れたお客様は、店員に対して好意を抱きます。復唱したほうが「この人は言ったことをきちんと理解してくれている」と考えるようになるのです。
なお、今回の例は飲食店なので商品名などの固有名詞を真似して復唱することになります。
このとき、もちろん商品名に限らず日付や曜日、会社名、個人名など、固有名詞にあてはまるものは基本的に真似をした方が良いです。これによって、相手はあなたに好感を抱いてくれるようになります。
このときの考え方を営業や電話対応などのビジネスシーンで活用することで、他人との人間関係を良好にすることができます。
物語(ストーリー)を語るときの共感度合いは強い
さらに強い共感を生み出し、好感を抱かせることを考える場合は物語(ストーリー)を活用するといいです。
実際のところ、人気のある映画やマンガのストーリーは全て型にはまっており、どれも同じ展開で物語が進んでいきます。この型は「逆転ストーリー」と呼ばれており、逆転ストーリーが最も共感を呼びやすくなっています。これは、すべての人に共通する人生の物語の型と共通しているからです。
例えば、就職活動の場面を考えてみましょう。このとき、以下のようになります。
平穏な日々を送っていたが、あるときスーツを身に付けて全国を飛び回ることになった。そう、就職活動だ。
履歴書を送っても不採用通知が届き、面接を受けても選考に通過しない。私は初めて、就職活動を通して自分自身を見つめなおした。そのとき、地元の小さな工場で働く先輩がいたことを思い出して訪問した。 そこでは衝撃を受けた。高い技術力をもつ会社であり、社員一人が自由に意思決定してビジネスをしていたのだ。大企業のような歯車とは異なり、ここに自分が目指す姿があると直感した。 先輩経由で会社の社長にその場で合わせてもらい、採用してほしいと訴えたが「人数がいっぱいだ」と断られた。ただ、そこで諦めるわけにはいかないため…… |
このように、一つのストーリーにします。就職活動をするとなれば「不景気」「雇用圧縮」という言葉が飛び交う中で奈落の底に落とされ、そこから苦労を重ねて勝利(内定)を取る」というストーリーを描くようになります。
もちろん就職活動に限りません。他にも受験であれば、受験戦争という底に落とされた後に「合格」という逆転ストーリーを勝ち取るために頑張ります。このように、全ては逆転ストーリーで人生が成り立っています。
それに対して、最初から順風満帆な人は共感されません。例えば、「東京大学へ進学し、大学院はハーバードを出て大手企業に就職後、独立して3ヵ月後から月商1,000万を達成した」という人の話を聞きたいでしょうか。スーパーマンのような人であるため、人は興味をもてません。
そこで相手に好感を抱いてもらうため、共感できる簡単な物語を語れるようにしましょう。
例えば、「ダイエットトレーナーとして私は活躍していますが、5年前はいまより体重が30kgも多かったのです」と自己紹介されたらどうでしょうか。本気でダイエットを考えている人であれば、非常に興味が湧いてきます。
ずっと痩せているダイエットトレーナーよりも、自分と同じように「かつて太っていて同じ悩みをもっている人」に人は共感を覚えます。共通点を語るとき、単に接点を述べるだけでは不十分です。そこに逆転ストーリーを交えることで、より好感を得られるようになります。
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仮想敵を作り、互いの意識を強固にさせる
また、共通点という意味では「仮想敵の考え方」も非常に重要になります。マーケティングやコピーライティングで人を動かす手法の一つが仮想敵に当たります。
共通点の応用編にはなりますが、ビジネスで稼いでいる人に限らず、政治やスポーツを含めあらゆる場面で活用されている共通点の手法が仮想敵です。
仮想敵の場合、文字通り「空想の敵」を作ります。例えば、高校野球を考えてみましょう。甲子園に出場する選手は都道府県を代表して出場します。このとき、あなたはどの県の選手を応援するでしょうか。当然、あなたの出身県の高校を応援すると思います。
それでは、なぜ出身県の高校なのでしょうか。隣の県の出場校ではダメなのでしょうか。
当然、いくら隣の県の高校に優れた選手がいたとしても、自分の出身県の高校を応援するのが基本です。倒すべき対象(他の県の高校)がいるからこそ、同じ出身県の人は一致団結して一つの高校を応援するのです。
敵を変えれば団結する対象が異なる
ただ、このとき仮想敵となる対象が変われば、敵対する人や仲間も変化します。先ほどの高校野球であるため、自分の出身県(同じ高校を応援する人)は仲間になりますが、その他の県の高校は敵になります。
一方で同じ出身の県であったとしても、プロ野球という括りで阪神ファンと巨人ファンがいた場合、この人たちは敵対します。これは、お互いを敵チームと思っているからです。
一方で同じ阪神ファンであれば、住んでいる場所や出身県に関係なく彼らは急に肩を並べるようになります。高校野球の場面では敵対していたとしても、プロ野球になった瞬間に「同じチームのファン」という共通点から話が盛り上がるようになるのです。それまで知らない他人同士であったとしても、共通点をきっかけとしてすぐに仲良くなれます。
ただ、こうした阪神ファンや巨人ファンであったとしても、仮想敵をさらに広いものにすれば急に仲良くなります。
例えば、野球の世界大会であったらどうでしょうか。この場合であると、アメリカや韓国などが敵になります。同じ日本人同士なので、阪神ファンと巨人ファンが手を取り合うようになります。一緒になって日本チームを応援するようになるのです。
出典:SPAIA
このように、仮想敵の対象を変えてしまえば人を団結させることができます。人を動かすための第一ステップとして仮想敵を作ることがあり、これによって敵同士を仲間に加えることもできてしまいます。
中国や韓国では日本をよく仮想敵にしますが、これは「共感させることで国民の心を一つにさせる」という意味で、とても理にかなった手法です。心理学の観点で言えば、日本を仮想敵にすることで自国民を団結させることができるのです。
仮想敵で共感させ、人を動かすテクニック
それでは、実際にこうした仮想敵をどのようにマーケティングやコピーライティング、営業手法などに活用すればいいのでしょうか。敵というのは何でも問題なく、「不満に思っていること」であれば仮想敵の対象になります。
また仮想敵を利用するとき、人の心理を理解することも重要です。大前提として、多くの人は「自分は悪くない」と考える生き物です。実際には努力していないその人が悪いのですが、自分がどれだけ頑張っても成功できないのは「自分のせいではない!」と考えてしまうのです。
そこで、ビジネスでのマーケティングやコピーライティングでは稼いでいる人だと、次のような共感させる文章(または言葉)を投げかけます。
- あなたが頑張っても成功できないのは、教えている先生が悪いからです
- 年金を貰えるかどうか心配になるのは、政府の施策に問題があるからです
- ダイエットがうまくいかないのは、今までのダイエット方法の理論が間違っていたからです
この場合は「それまで教えていた先生」「日本政府」「それまでのダイエット手法」を仮想敵としています。これによって、「そうか自分は悪くないんだ!」と思わせることができます。非常に簡単に説明しましたが、これが仮想敵によって共感させるテクニックとなります。
単に共通点があるだけでも、相手に好感を抱かせることができます。ただ、そこに仮想敵の考え方を取り入れれば、さらに人を共感されるようになります。共通の敵がいるからこそ、仲間として認識してもらえるのです。
注意点として、仮想敵はあくまでも自分が作り出した仮想上の敵となります。
決して個人攻撃ではないので注意してください。「こういう事柄はダメ」と仮想となる敵を攻撃しているだけです。
これを勘違いし、有名人を含め個人を対象として攻撃する人もいますが、それは人間として最低の行為だといえます。人の批判と仮想敵はまったくの別物です。仮想敵は非常に優れたマーケティング手法ですが、個人攻撃や批判は卑劣な行為にすぎません。そのため、仮想敵のテクニックを正しく用いるようにしましょう。
共通点や仮想敵を用いれば商品が売れるようになる
心理学として有名なものに類似性の法則があり、要は「共通点があると、人は好意を抱く」という法則になります。
当然ながら、人に共感されればそれだけ親しくなり、ビジネスを行うにしても商品が売れやすくなります。また、純粋に友達として仲良くなる場面についても、共通点を探るほど良い結果を生み出すようになります。
さらにいうと、単に共通点を述べるだけでなく、「物語(ストーリー)を語る」「仮想敵を用いる」ことも意識してみましょう。そうすれば、より相手はあなたに対して共感し、好意を抱いてくれるようになります。
共通点による心理戦略はビジネス活動に限らず、政治戦略やスポーツを含めあらゆる場面で利用されています。そこであなたも共通点の考え方をうまく用いれば、より人間関係が円滑になり、ビジネスでも成功しやすくなります。
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