何か商品・サービスを売ることを考えるとき、ビジネスが円滑に回るように仕組まなければいけません。優れた商品を作れば売れるわけではないからです。
そうしたとき、マーケティングやコピーライティングの世界では、優れた手法として「物語(ストーリー)を語る」という方法が存在します。一つのストーリーを見せられたほうが人は好感を覚え、商品を買ってくれやすくなるのです。
ストーリーを用いたマーケティングや営業手法は「神話の法則」とも呼ばれます。ストーリーは特定の型が存在するため、型に当てはめることで人の感情を揺さぶる物語を作れるようになるのです。
そこで、どのように商品にストーリー性を組み込めばいいのでしょうか。ここでは、「ブランディングの手法で用いられる、ストーリーの作り方や戦略」について解説していきます。
人を共感させ、引き込ませるマーケティングやコピーの仕組み
なぜ、人は商品を購入するのでしょうか。この一つの理由として共感があります。人を動かすためには、共感によって感情を動かさなければいけません。
例えば、起業して稼ぎたいと考えている人に対して、ある富豪が「私はもともとアラブの石油王で何もしなくても金があって……」と語ったとします。
しかしその時点で、その人からは「自分には関係ない」と思われてしまいます。土地を掘れば石油が出てくる富豪の話を聞きたいのではなく、自分の力で起業して稼ぐ方法を知りたいからです。
他にも、「自分は東大に入学して首席で卒業し、その後はハーバードで勉強しました。卒業後に会社で3年間働いた後に独立しましたが、2ヶ月後には利益が月300万になり、現在では年商10億にまで成長しています」と言われたらどうでしょうか。
このときも同じように、自分には全く関係のない話だと思われてしまいます。天才的な頭脳をもったスーパーマンのように感じられるからです。
一方で次のようなストーリーではどうでしょうか。
【2000万の借金を背負って倒産後、2年で年商50億の飲食業の社長へ】
5年間の会社勤務を経て起業後、飲食店を立ち上げるも5ヵ月後に2000万の赤字を出して倒産しました。そのようなとき、たまたまあるセミナーに出かけました。今では有名ですが、当時はまだ無名だった〇〇さんのセミナーです。 このとき、話が進むに連れて「なぜ私がこれまで失敗を繰り返してきたか」に関する答えが明確になり、この人に付いて行こうと決心しました。単なる直感です。 そしてマーケティングやコピーライティングなどを学んでいくうちに、本物のビジネス思考を少しずつ理解していきました。それからというもの、もう一度飲食店を立ち上げて夜も寝ずに頑張りました。お客様を喜ばせてリピートしてもらうことだけを考えたのです。 そうして成功し、現在では30店舗以上を経営する年商50億の社長になっています。ただ「過去の私のように、苦しい思いをしていた人を救いたい」という思いから、飲食店を専門としてコンサルティング業も行うようになりました。 私のコンサルにより、クライアントのほとんどが3ヵ月後に平均で利益を1.5倍にまで押し上げています。これも、多くの飲食店を活気付けたいために行っている活動です。私と一緒に新たな飲食業の未来を切り開いていきましょう。 |
もし、あなたが飲食店のオーナーで赤字が出続けて困っている状況であれば、コンサルをお願いしようと考えないでしょうか。
これは、私が即興で作成したストーリーです。この物語文章を書くのに5分しか費やしていないので、あまり深い内容でないのはお許し下さい。ただ、今回の物語については「人を共感させる物語の型」に当てはめて記しています。
実際、こうしたストーリーがなく「私は年商50億の飲食店社長ですが、コンサルティングを受けてみませんか」と提示されたところで全く響きません。共感がないからです。
そうしたとき、物語がどのような型になっているのかより詳しく解説していきます。
全ての物語は神話の法則で成り立っている
あらゆる物語は同じ流れで出来上がっています。これは映画であってもマンガであっても同様です。全てには一つの型しかありません。具体的には、以下のような流れとなっています。
- 冒険への旅立ち
- 試練や困難、成長
- クライマックス
- 帰還
非常に簡潔に記しましたが、この型さえ理解してしまえばある程度は人を引き込む文章を書くことができます。これは、「神話の法則」という本に書かれています。
それぞれの項目について、もう少し細かく解説していきます。
1. 冒険への旅立ち
映画やマンガ、小説を含め最初は何もない平穏な日常の場面から始まります。全てのストーリーは最初、普通の状態です。
ここから、物語に入るための何かしらのきっかけがあります。謎の人物が現れて予言をするかもしれませんし、不思議な扉を開くのかもしれません。誰かの死かもしれません。いずれにしても、ここから物語がスタートすることで話に引き込ませるようにします。
2.試練や困難、成長
そこから主人公は話を進めるために挑戦をするようになります。ここに仲間が現れ、敵も出てきます。このとき、全てが順調に進んでいる物語は全く面白くありません。主人公には乗り越えるのが困難な試練がいくつも待ち構えており、それを一つずつ突破していきます。
もしかしたら仲間が裏切るかもしれませんし、誰かを犠牲にしなければ前に進めないかもしれません。心の葛藤があり、それを乗り越えることによって成長していきます。それまで敵だった人物が仲間に加わり、新たな気づきを得ることもあります。
3. クライマックス
そして最も危険な場所に接近することによって、最大の試練が待ち構えています。生死の境をさまよい、ここで主人公に大きな変化が起こります。この変化をきっかけとして新たな力を手に入れ、本当の目標を定めます。
その後、新しい能力をもった主人公はクライマックスとして悪者との決戦を行います。
4. 帰還
そして、最後に宝を持って帰還します。これが、感動を呼ぶ全ての物語に共通するストーリーであり、話が完結します。
あなたの人生での神話の法則
なぜ、この型が優れているかというと、あなた自身の人生にも同じことがいえるからです。これまでの人生の中で、あなたにも多くの試練があったと思います。例えば、受験の場面を考えてみましょう。
1. 冒険への旅立ち
平和な学生生活を過ごしていた中で、学校の先生から「受験があるぞ」という号令がかかります。これによって、全ての学生が「受験戦争」という非日常の世界に連れて行かれます。 2. 試練や困難、成長 そこでは「試験の成績が上がらない」「勉強するやる気が起こらない」などの試練が待ち構えています。これを乗り切るために友達と一緒に勉強し、多くの仲間が現れます。 3. クライマックス そうして、神話の法則の「最も危険な場所」として受験日を迎えます。いわゆるクライマックスです。この試練を乗り切ることができれば、晴れて新たなステージを踏み出すための切符を手に入れることができます。 4. 帰還 物語として、最後は晴れて合格したかもしれません。しかし場合によっては、不合格によって涙を流したかもしれません。人生のストーリーは人によって違います。ただ、いずれにしてもクライマックスを乗り越えることで新たに成長するようになります。 |
このように考えると、人生というのは神話の法則と同じストーリーではないでしょうか。別に受験に限らず、スポーツや恋愛を含めあらゆる場面で神話の法則に沿った形で物語が流れていきます。私たちの人生そのものが「困難な状況からどう頑張ったか」という物語でもあるのです。
だからこそ、人が共感する話は全て同じ型で作られています。映画やマンガ、小説を含め、よく観察すると全部が同じ流れだと気が付きます。
類推話法で最も重要な逆転ストーリーの要素
これら神話の法則で最も重要な要素は何かというと困難な出来事(試練)になります。順風満帆な物語ほど、つまらないものはありません。困難な出来事が待ち受けているからこそ、ストーリーが面白くなるのです。
最初の飲食店の例についても、「一流企業で活躍し、起業してすぐに儲かった」という人では面白くありません。それよりも、飲食店を経営して一度倒産させてしまい、そこから這い上がってきたという逆転ストーリーのあるほうが話は面白いです。
そこで、何か商品やあなた自身を紹介するときは逆転ストーリーを取り入れるようにしましょう。こうしたストーリー話法のことを営業で類推話法と呼びますが、「神話の法則を用いて物語を語る販売手法=類推話法」と考えて問題ありません。
そこで、商品を紹介するときに物語を取り入れると以下のようになります。
万が一のときに備えるのが生命保険です。本当は望ましくないのですが、過去に一度だけ生命保険を使う場面がありました。働き盛りの38歳の男性でしたが、交通事故で死んでしまったのです。
私も葬式に参列しましたが、奥さんの「小さい子供もいるのにどうするの?」と泣いていた姿が忘れられません。ただ、後日に家庭を訪問しました。奥さんには、旦那さんが生命保険に加入していたため、問題なく生活は守られることを話したわけです。 生命保険を使うべきではありません。ただ、何か起こったときに家族を守る最終手段でもあるのです。 |
「保険は万が一に備えるときのものです」とだけ伝えるときに比べて、こうした物語形式にした場合ではどうでしょうか。死という困難な出来事が起こったとき、生命保険という切り札によって救われたという簡単な物語(逆転ストーリー)にしましたが、これだけでも相手が受け止める印象は大きく変わります。
ストーリーを語る類推話法というのは、マーケティングや営業の場面で大きな力を発揮します。人間は物語が好きだからこそ、神話の法則での型に当てはめることで共感されるようになるのです。
相手の欲や本心を引き出すストーリーの作り方
それでは、より優れたストーリーを作って商品・サービスをブランド化するにはどうすればいいのでしょうか。何でもいいから物語形式にすればいいわけではありません。共感させる商品開発ストーリーや自己紹介の物語を作成するには、相手の欲するものは何かを考える必要があります。
例えば、副業を考えている主婦に対して「会社組織を作り、1億円を稼げる方法を教えます」と伝えても響きません。それよりも、「月5万円ほどプラスになる在宅ワークを教えます」と伝えた方が響きます。
他にも、楽してダイエットすることを考えている女性に「ダイエットジムに通って痩せる方法を伝えます」としても心は動きません。それよりも、「朝食をスムージーに変えるだけで簡単に痩せる方法を教えます」のほうが響くようになります。
「金を稼ぐ方法」「ダイエットをする方法」と達成できるものは同じであっても、相手が欲しているものと合致させることでようやく共感を得られるようになるのです。いくら優れた物語を作ることができたと思っても、お客さんが心の底から欲するものでなければ意味がないのです。
そこで、ビジネスとして商品やサービスを売るときは明確な特定の一人の人間(ペルソナ)を決めましょう。実際、30代女性であっても以下のように、身を置かれている状況は人によりそれぞれ異なります。
- 会社で働くバリバリのキャリアウーマン
- 子育て中の主婦
- フリーターとして日々を過ごす32歳
このとき、転職サービスを売るにしてもキャリアウーマンであれば「高年収の転職サービス」が刺さります。
一方で子育て中の主婦では「スキルなしでも働けるパート求人」に飛びつきます。フリーター女性であれば、正社員求人に興味があります。
人によって求めていることが異なります。これを認識して、あなたがビジネスを行うターゲットのペルソナが何を欲しているのかを考えて物語を作るようにしましょう。
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お客さんに質問して本心を引き出す質問話法
ただ、このときお客さんが本心で何を求めているのか分からない場合があります。そうしたとき、質問してみるといいです。営業では質問話法と呼ばれますが、要は「お客さんに質問を投げかけ、その本心を導き出す」という手法になります。
例えばダイエット器具の販売を行うとき、お客さんが「一度ゆっくりと検討させてくれませんか?」と言ったとします。
このとき、お客さんに質問をします。ただ、「納得できない点は値段でしょうか? それとも、製品の大きさでしょうか?」のような形でたくさんの質問を投げかけると、お客さんを疲れさせてしまいます。
そこで、お客さんに対して「本当のところはどうなのですか?」といった問いかけをします。「お客さんが何について検討したいのか」という本心を直接聞いてしまうわけです。
質問話法によってお客さんの悩みを聞き出せば、後はそれを解決してあげるだけです。例えば、「家のスペースが狭くてダイエット器具を置けない」という悩みがある場合、紹介した製品よりもコンパクトに収納できる商品を提示します。
もちろん、このときはこれまで説明した通り逆転ストーリーの形式にしましょう。「以前のお客さんにも、ダイエット器具の大きさが気になって購入をためらったかたがいます(困難な状況)。そこで、お試しでこちらの製品を使ってみたところ……(解決策)」のような感じで説明します。
物語を語るだけでは意味がありません。お客さんの本心や欲求を理解したうえでのストーリーだからこそ共感され、ブランディングにつながるわけです。
・人間の悩みは共通している
特に商品開発段階ではお客さんの悩みを正確に把握しているわけではないため、質問話法を取り入れてお客さんの本音を聞くようにしましょう。ただ、そうしていくつものお客さんの悩みを聞いていれば、「自分の商品を使うお客さんが悩んでいる事柄はどれも共通している」ことに気が付きます。
例えば、ダイエットスムージーを購入する女性は「朝食をスムージーに置き換えるだけで、楽に簡単に痩せたい」と考え、太っている自分に悩んでいる人が大半です。そうしたとき、商品ストーリーでのブランディングのためにどのような物語を考えればいいのか分かってきます。
人の悩みはいつの時代も共通しています。そこで、ペルソナとなる人間がどのような悩みをもっているのかを本気で調査し、それを元に商品ストーリーを作成するといいです。
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ビジネスでの物語を構築する
マーケティングや営業、コピーライティングの場面で非常に重要な要素の一つがストーリーです。単に商品を説明するよりも、そこに物語を取り入れるだけで爆発的に商品・サービスが売れるようになります。
人は物語に弱いです。理由は単純であり、人生そのものが一つの物語になっているからです。そこで、商品開発ストーリーや自己紹介ストーリーを作成することでのブランディングを図るようにしましょう。ここで人を共感させることができれば、ビジネスでの売上が変わってきます。
しかし、何でもいいから物語を作ればいいわけではありません。お客さんが望む欲望を把握し、それに沿ったストーリーを作り上げるから共感されると考えましょう。
ビジネスでブランド化を図るときに物語は必須です。ただ、ストーリーの作り方には型があります。どの時代でも当てはまる普遍的な型(法則)であるため、必ず神話の法則(逆転ストーリー)を取り入れた物語を構築するようにしましょう。
神話の法則・類推話法はマーケティングの基礎となる知識ではありますが、実践している人は圧倒的少数です。そこで、この考え方をいますぐ取り入れることでビジネスでのライバルに差をつけるように仕向けましょう。
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