禁止されると、かえって気になってしまう心理学の要素をカリギュラ効果といいます。禁止される分だけ「それを見たい」「やってみたい」という衝動に駆られてしまうのです。
例えば、写真を他の人に渡す役を頼まれたときに「絶対に中を見ないで!」と言われれば、中を確認したくて仕方がなくなります。人は言われたことと反対の動きをしようとするのです。
実際にビジネスを動かす場合、このカリギュラ効果を営業や広告のコピーライティングとして上手く取り入れることにより、一瞬のうちに売上を上げることができます。心理学をビジネスに取り入れると、すぐに利益が増えていくのです。
それでは、どのようにして「禁止を用いた手法」によってビジネスを発展させればいいのでしょうか。これについて、実例をもとにして解説していきます。
自分の意志で行動したい心理的リアクタンス
人間には、「自分の行動を自ら決めたい」と考える本能的な欲求があります。これを、心理的リアクタンスと呼びます。
例えば、子供のころ親に「勉強しなさい」「ゲームは禁止」などのようにいわれて、反発したことはないでしょうか。親に指図されることにより、逆にやる気がなくなることはよくあります。
なぜ、このような現象が起こるのかというと、その理由は心理的リアクタンスが働いているからです。指示されることによって、自らの意思で動きたいと考える根源的な欲求を阻害されてしまうのです。その結果、抵抗するようになるのです。
カリギュラ効果はこうした心理学の一種です。禁止されると自らの意思を制限されるようになるため、結果として禁止を破ってみたいと考えるようになるのです。
鶴の恩返しや浦島太郎もカリギュラ効果の一例
そのように考えると、昔話でもカリギュラ効果を用いた話がいくつも出てきます。例えば、鶴の恩返しや浦島太郎です。
出典:【絵本】つるのおんがえし
鶴の恩返しでは、「絶対に覗かないでください」と言われながらも、実際には見てしまいました。浦島太郎でも、「絶対に開けないでください」と言われたにも関わらず、玉手箱を開けてしまいました。禁止されることでやってしまう行為は、昔話の中でも広く事例として取り上げられています。
ビジネスで商品を買わせるマーケティング手法
それでは、こうした禁止を用いたマーケティングとしてはどのようなものがあるのでしょうか。実は、この手法は世の中に広く取り入れられています。
例えば雑誌を立ち読みしていると、袋とじに出会うことがあります。「丸秘!!」のようなマークが大きく書いてあり、その雑誌を購入しないと中身を見ることができません。これは、カリギュラ効果の一種です。見ることを禁止されているため、中身が気になってしまうのです。
ただ、立ち読みだと中身を覗くことはできません。そのため雑誌を購入し、家などでこっそりと中身を確認するようにします。
同じように考えると、テレビで行われる「ピー」というモザイク音もカリギュラ効果を期待しています。
普通に考えて、ピーという音を出すくらいなら、その場面をカットすればいいだけです。ただ、それにも関わらず映像として出すのは、そのようにして興味を惹かせるためにあるのです。
他にも京都の由緒正しい料亭であると、一見さんお断りの店があります。既に何度も訪れたことのある人であれば何とも思わないでしょうが、贅沢な生活を経験していない人間にとっては「一度は行ってみたい」と思ってしまいます。
誰でも入ることができないからこそ希少性が生まれ、何としてでも行ってみたいと考えるようになるのが人間です。
このように、敢えて禁止することによって興味をそそることができるのです。
禁止により、逆に興味を持たせる営業やコピーライティング
当然、これらの手法はあなたも取り入れることができます。ビジネスである以上、稼ぐためには自分の商品を売ることが必要不可欠となるものの、オファーの仕方によって成約率が全くもって異なってくるのです。
実際ところ、多くの人は「買ってください」と頼みます。しかし、それよりも「買わないでください」とオファーしたほうがより大きい成約率を出すことができます。
例えば、あなたは以下のような営業を受けたときにどのように思うでしょうか。
私の商品は最高です。特別です。言うことありません。
なので買ってください。こんなに良い商品を買わないあなたは間違っています。今がチャンスです。とてもお買い得です。決断は早くしてください。 |
このように営業されると、よほどのことがない限り財布のヒモを緩めることはありません。ただ、これが世の中に溢れかえっている一般的なオファーです。大企業であっても、このような営業を展開したり、広告のコピーライティングで採用したりしています。
そこで、禁止によって人間の欲求を掻き立てます。例えば、次のような文章ではどうでしょうか。
このダイエット商品は多くの人に使って欲しくありません。数に限りがあるため、本当に価値の分かる人だけ手に取ってください。
少なくとも、「簡単に痩せたい」と思っている人には確実に向いていません。そのような人はお金の無駄なので買わないでください。 |
このような伝え方だと、ダイエットをしようと思っている人であれば少しは興味が湧くと思います。誰でも使ってほしいと述べるのではなく、敢えて禁止をするのです。禁止をするほど、その反対に興味をもってくれる人の数が多くなるのです。
好奇心を増幅させるキャッチコピーの事例
そのように考えると、どのように営業を展開したりキャッチコピーを考えたりすればいいのか理解できるようになります。マーケティングを仕掛ける場面であっても、禁止をうまく取り入れるようにするのです。
例えばキャッチコピーを考えるときに、以下のようなコピーライティングだと好奇心が増幅されて「見てみたい」と考えるようになります。
- 悪用厳禁!〇〇の手法
- セールスの勉強はするな!集客を学べ!
- 初めての人にはこの化粧品をお売りできません
他にも、ホラー映画のキャッチコピーでは「決して一人では見ないでください」などのように注釈を付けていることがあります。これは、禁止することでそれだけ怖い内容であることを妄想させるためにあります。
出典:サスペリア
うまく禁止を取り入れれば、行動心理学の観点で多くの人が興味を持ってくれるようになるのです。
理由を付けると売れるようになる使い方
それでは、禁止さえすればいいのでしょうか。当然ながら、好奇心を増幅させるカリギュラ効果の使い方としては、禁止だけでは不十分です。本来はここからさらに「理由」を付けなければいけません。
先ほど、ダイエット商品を売るときのカリギュラ効果について具体例を記しましたが、ここに理由を付けると以下のようになります。
このダイエット商品を多くの人に使って欲しくありません。この商品は1つ1つを手作りで丹精込めて作っているため、数に限りがあります。そのため、売れすぎてしまう、と本当の意味でこの商品を望んでいるお客様の手に届かなくなってしまいます。
そのため、本当に価値の分かる人だけ手に取ってください。 |
このように、「手作りで丹精込めて作っているため、数に限りがある」「売れすぎると、本来のお客様が手に取れない」などの理由を付け加えています。単に禁止するのではなく、そこに禁止する理由を付け加えるのです。
こうすると、反応率が上がります。こちらからのメッセージとして、「本当に必要だと思う人だけ購入して欲しい」という気持ちを伝えることができるからです。
京都の一見さんお断りの料亭でも、「お客さんのことを深く理解していないと、本当に優れたおもてなしサービスを行えない」という理由から、予約制となっています。こうした理由があるからこそ、付加価値が付くようになるのです。
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簡単に乗り越えられる壁を用意する
ただ、このとき禁止をするとはいっても、用意するのは簡単な壁にしましょう。乗り越えるのが厳しい壁を用意してはいけません。
例えば、ダイエット商品を売るときに「数に限りがある」「価値が分かる人だけに注文してほしい」といっても、こうした広告を出したり営業をしたりしている以上、申し込みを行えば誰でも商品を手に取ることができます。
一方でこれが「注文が殺到して品切れであり、新たに注文してもお届けは半年後です」といわれたらどうでしょうか。どれだけ魅力的な商品だとしても、急に購入する気が失せてしまいます。
禁止とはいっても、お客さんに「注文するのが面倒そう」と少しでも思わせてはいけません。カリギュラ効果はあくまでも興味付けのために利用するのです。本当の意味で禁止を目的とし、購入のハードルを高めてお客さんの購買意欲を奪ってはいけないのです。
こうした原理原則を理解したうえでビジネスでのマーケティングを仕掛けましょう。
好奇心を抱かせ、ビジネスを加速させる
これらの心理学を学べば、大企業であっても多くの間違いを犯していることに気が付きます。単に自社製品の良い点だけを並べているだけであり、まったく興味をそそられないケースは多いです。
そこで、ビジネスの中に禁止を取り入れてみましょう。カリギュラ効果を分かりやすく表現すれば「絶対に〇〇しないでください」とオファーすることになります。そのため、ビジネスですぐに取り入れることができるテクニックの一つです。
営業やコピーライティングを含め、マーケティングの場面では心理学が重要となります。ここまでを理解すれば、「なぜ心理学を学べばビジネス能力が飛躍的に向上するのか」が分かるのではないでしょうか。
すぐにでも活用できるビジネスでの有効な行動心理学がカリギュラ効果です。カリギュラ効果を取り入れ、お客さんを魅力するオファーを提示しましょう。