ビジネス戦略

パレートの法則:重要な2割に力を注ぎ、売上を伸ばすビジネス活用法

同じように努力したとしても、どのようなことに注力するかによってその後の成果は大きく変わってきます。大きな結果を素早く出すとき、必ず重要事項に対して力を使わなければいけません。そのほかの事柄については、無視する思考が必要です。

なぜ、こうした考え方を実行できる人が成功できるのでしょうか。これには、パレートの法則という有名な概念で説明されています。パレートの法則は「80:20の法則」と呼ばれることもあります。

特に企業経営や起業などでビジネスを行うとなると、成果を生み出す重要事項について注力しなければいけません。ただ、ビジネス内容によって重要事項の状況は変わるため、何が重要なのかを見極めながら判断する必要があります。

このときパレートの法則を意識すると、ビジネスで成果を出しやすくなります。そこで、「どのようにして、パレートの法則をビジネスで活かせばいいのか」について解説していきます。

重要事項は全体の2割で決まる経験則

統計的に、世の中はすべて80:20の割合で動いています。例えば離婚件数全体の80%うち、一回でも離婚を経験したことのある20%の人が占めていることを知っているでしょうか。つまり、同じ人が何度も結婚と離婚を繰り返しているため、結果として離婚件数が増えているのです。

考えてみれば当たり前ですが、人間的に優れている男女が結婚して本当の意味で幸せになれば、離婚する必要がありません。一方、何度も離婚する人であるほど、なぜか同じ過ちを繰り返します。

これは、ビジネスの場面でも同じです。コンビニなど店舗に並んでいる何万点もの商品のうち、わずか20%の商品が全体の80%の売り上げを作り出しています。つまり、売れ筋商品が利益を作り出しているのであり、残りの商品はただ鎮座しているだけにすぎません。

このように、20%というわずかな事象が全体の大きな成果を生み出しているという経験則がパレートの法則です。

この法則を発見したのは、イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレートです。彼はイタリアでの土地を調べたところ、2割の国民が全体の8割の土地を所有していることを報告しました。これは、2割の人が全体の8割の富をもっていることと同じ意味です。

パレートの法則が80:20の法則とも呼ばれているのは、こうした理由があります。そこでパレートの法則を活用すれば、短い時間で大きな成果を出すことができます。大きな結果を生み出している、わずか2割のことに力を注げばいいからです。

・重要事項を考え、それだけを実行するべき

まず、あなたの1日の行動を羅列してみましょう。また、1年後に生み出す成果を見通して、何をすべきかを書き出してみましょう。おそらく、何十個もの項目が並ぶことになるはずです。

その中から、「重要だと思わない8割の項目」を削除してください。そうすれば2割が残ります。あなたが行うべきは、このときに残った2割の事柄に対して注力することなのです。そうすれば、将来はより大きな成果を生み出せるようになります。

20%の重要事象に労力を使わなければ、成功するスピードは格段に遅くなります。結果が出ることに労力を使うからこそ、大きな結果を得られるようになるのです。

何かを行うことは、「しないことを決めること」である

ビジネスや富に限らず、パレートの法則はあらゆることで共通しています。例えば勉強(学校のテスト)であれば、2割の大切なことをマスターするだけで、テスト全体の8割の問題を解けるようになります。スポーツであれば、重要な2割のトレーニングに打ち込むことで、8割の成果を出せるようになります。

成果というのは、このようにして創出するのです。行うことを決めて実行すれば、行動している時間は他のことができなくなります。つまり、何かを行うということは、「しないことを決める」ことだともいえます。

やるべきことを決め、行わないことを排除していけば、成果は違ってきます。周りを見渡せば、いくら努力しても結果につながらない人がいると思います。これは、間違った努力をしており、重要事項を認識していないために起こります。

例えば私の場合、いまは起業して会社経営をしていますが、当サイトを運営していることから分かる通りサイト運営を主体としたネットビジネスを実践しています。

サイト運営で成功する方法とは、要は「読者にとって有益な記事を提供する」ことだけです。そのためには家にこもって記事を書き続ける必要がありますが、サラリーマン時代は起業するに当たって以下のことをすべて排除するようにしました。

  • あらゆる飲み会
  • テレビを見る時間
  • 無意味な残業
  • 友人に誘われての外出

ある時期から、空気を読まずにこれらを完璧に実行するようにしました。そのため、非常に付き合いの悪い人間になったわけですが、本当に重要なことだけに集中した結果として大きな成果を出し、現在では法人化まで実現しています。

・効率よく成功するには、正しい努力が必要

あまり努力しているように見えなくても、大きな成果を出す人がいます。これは、自分の得意分野を認識したうえで、注力すべきことを理解して行動した結果だといえます。

何かを行う上で、時間管理はとても重要です。過ごすべき時間を意識するだけで、その後に待っている未来がかなり違ってくるからです。

これまで「活用すべき時間」について意識していなかった場合、どのようなものが20%の重要事項に当たるのかを考えながら行動してみてください。それだけで、将来に生み出せる8割の成果が違うものになるはずです。

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営業マンなど、サラリーマンでは優先事項が決まっている

当然ながら、優先事項に注力するのは起業家に限らず会社に所属している人でも同様です。例えば新規開拓や商品販売など、営業マンにとっての最重要事項は何か分かるでしょうか。営業の優先事項は一つしかなく、それはアポ取りです。

アポイントを取って商談しなければ、営業マンは商品を販売することができません。また、顧客と信頼関係を築くこともできません。そういう意味では、アポ取りを実現しなければ営業は何も始まりません。

実際、トップ営業マンであるほどスケジュール帳を見ればアポイントの予約がギッシリと詰まっています。正月やお盆に関係なく、アポをたくさん入れています。もちろん、単にアポを入れるだけではいけませんが、多くの見込み客と会って商談するほうが圧倒的に数値結果に結びつきやすいといえます。

サラリーマンの場合、優先事項は非常に単純です。そのため、実のところ少し考えれば簡単に成果を出せるようになります。

・経営者(社長や役員)の優先事項は変化する

それに対して、企業経営者にとっての優先事項は何でしょうか。これについては、そのときの環境や状況によって変わります。営業マンのように、重要事項が一つではないのです。

起業したばかりの会社であれば、取引先やお客さんとの関係づくりが最も重要な課題になります。組織化を強固にしたい場合、採用が重要課題になります。売上が伸び悩んでいる場合、商品開発や集客を最も優先するべきかもしれません。

このように、会社の置かれている状況が変われば、企業が行うべき対応も変化するのです。そのため、会社経営者はその場に応じた適切な判断が求められます。

ABC分析など、マーケティングの言葉は異なる

なお、マーケティングでの考え方で重要なパレートの法則ですが、非常に重要な経験則であることから別の言葉で表現されることもあります。その一つがABC分析です。

ABC分析では、商品を「Aクラス:売上の7割を占める商品」「Bクラス:売上の1~2割を占める商品」「Cクラス:売上のうち1割未満の商品」に分けます。これをグラフとして図式化すると、例えば以下のようになります。

これはパレートの法則と同じように、要は「Aクラスの製品が売上のほとんどを作っているため、この製品に注力しなければいけない」というものです。そう考えると、どのように経営判断をすればいいのか分かるようになります。

例えば、企業経営者が営業マンを活用するとき、どのようにするべきかというと「Aクラスの製品をどれだけ売るか」を評価基準にしなければいけません。

多くの会社はこれを無視して、例えば「新開発の商品をどれだけ販売したか」を重視する傾向が強いです。利益を出している昔の商品を売っても評価をせず、新商品ばかりに注力するのです。その結果、既存商品のシェアが奪われていても、営業マンは新商品を売るほうが評価されるため、利益がほぼ出ない製品ばかり注力することになります。

こうして経営判断を誤ると会社が傾きます。もちろん新しいことに挑戦するのは重要ですが、これは成果が出ることに注力しているからこそ利益が守られているという事実を認識しなければいけません。

新規ビジネスでは雑に始めて当たりを付けるべき

パレートの法則から考えると、ここまで述べた通り成果の大きなことだけに注力するべきです。ただ、このようにいうと勘違いする人が非常に多くなります。新規ビジネスをスタートさせるとき、最初から質を求めて完璧を目指そうとするのです。しかし、そうなると逆にビジネスは停滞します。

既存のビジネスを伸ばす場合、何をすれば成果が出るのか分かっている状態であるため、重要事項に集中すればいいです。しかし、これが起業や新規ビジネスのスタートとなると、最初は雑に始めて当たりを付けなければいけません。重要な2割に集中するとはいっても、「重要な20%は何か」がそもそも分からないからです。

そのためビジネスでうまく行く人は「変なことを考えずに20%くらいの完成度で良いので始めてみる」ようにします。完璧を求めようとすると、なかなか前に進みません。そうではなく、雑でもいいので開始してみて、実際に全部通して実行するのです。

私もサイト運営のネットビジネスで起業したとき、まずはサイトを立ち上げ、そこから少しずつ修正を加えながら現在のような形になっています。

実際に行動すると、「集客するにはどうすればいいのか」「商品を売る導線はどうするのか」を考え始めます。そうして実体験を積むことで、ようやく「サイト運営で成功する重要な2割は何か」を理解できるようになったわけです。

サイト運営の場合、「キーワードを確認して、読者が欲している記事を返す」「自分しか発信できない情報を提供する」「大きなお金が動く分野を攻める」ことが重要な要因になります。ただ、これらは実際に行動してみなければ分かりません。

多くの人は最初から質を求めますが、実際のところ無理です。大量の行動を実践した結果、ようやく重要な2割に気づいて質に変わっていきます。本当に稼いでいる人は数を多くこなして「残り2割の正解」を常に探り続けているともいえます。

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長所と短所を理解し、ロングテールでも商品を売る

なお、それでは重要な20%と残りの80%のうち、売れない80%が完全に不要かというと必ずしもそうではありません。売れない商品も重要な要素になります。

例えばコンビニであれば、売れる商品の定番としては弁当やパン、ドリンク類、スナック菓子があります。これらが主力製品になりますが、店内には歯ブラシや化粧品まで置いてあります。こうした生理用品まで置いてあるため、「コンビニに行けばひとまず何でも揃っている」と思ってもらえるようになります。

もし、このとき売れる商品だけ残していればどうでしょうか。コンビニの場合、飲食物が売れるので弁当やドリンクばかり配置しておくのです。しかし、それでは単なる弁当屋と変わりません。人が入らないようになるため、そうならないために売れない商品を配置することも重要になるのです。

・ネットビジネスだと売れない商品が特に重要になる

また、これがリアル店舗のように「物理的に商品を置ける数に制限がある」というビジネス形態ではなく、ネットビジネスのようにあらゆる商品を無限に配置できる状態の場合、売れない80%の商品が特に重要になります。

この戦略で成功している会社がAmazonであり、いくらでも商品をネット上に掲載できるという特性を利用することで、ほとんど売れない商品についても掲載し、莫大な利益を出すようにしています。

こうした売れない残り80%の商品については、恐竜の尾っぽみたいに長くなっていることからロングテールと呼ばれます。

ネットビジネスでは、ほぼ無限に商品を掲載できることからロングテールをどれだけ攻略できるのかが重要になります。

例えば私のサイトであっても、主要な2割の記事ページ(コンテンツ)がサイト全体の8割のアクセスを集めていることには変わりありません。

ただ、このようにサイトが売上を出しているのは、そこまでアクセスを集めていない8割の記事があるからなのです。

当サイトであっても、記事数がいまの2割ほどだと「このサイトの運営者は情報量が少なく、実のところ大したことがないのでは?」と思われてしまう恐れがあります。実際、あなたも10~20ページほどのWebサイト・ブログにたどりついたとき、そのサイト運営者をすごい人だとは思わないはずです。

ただ、当サイトにはサイト運営に関する非常に多くの情報を掲載しているため、訪問してくれた人は「このサイト運営者は非常にたくさんの知識を有している」と思ってくれるようになりやすいです。その結果、ファンになってくれる可能性が高くなるのです。

こうしたことから、重要な2割に注力して大きな成果を出していったあとは、ブランディングの意味も含めて「主要製品をより強力にする、成果が出にくい残りの8割の要素」にも注力しましょう。まさに、コンビニが敢えて売れにくい歯ブラシや生理用品を配置しているのと同じことをするのです。

働きアリの法則から見る、パレートの法則の応用・活用法

このように考えてビジネスを実践するのは、いってしまえばパレートの法則の応用編だといえます。重要な2割に注力することについては、多くの人が提言しています。ただ、実際のマーケティングまで考えたとき、残り8割のロングテールをどう扱うのかを考えることも重要になるのです。

これについては、働きアリの法則を考えれば分かります。基本的には、「パレートの法則≒働きアリの法則」と考えれば問題ありません。ただ、働きアリの法則ではパレートの法則よりも少し進歩した応用編となっています。

アリのうち、「2割:かなり働くアリ」「6割:普通に働くアリ」「2割:働かないアリ」となっています。パレートの法則と同じように、重要な2割のアリが全体を支えるようになっています。

それでは、「2割:かなり働くアリ」だけを集めればどうなるでしょうか。いわゆる、オールスターのような状態です。ただ、こうした「2割:かなり働くアリ」だけを集めたとしても、同様に「2:6:2」の割合に分かれ、仕事をサボるアリが出現することが分かっています。

なぜ、こうした状態になるのでしょうか。これについては、アリのうち全員が必死で働くと最初は非常に仕事効率が良くなるものの、後になってパフォーマンスが一気に落ちることが分かっています。その結果、組織を維持できなくなるのです。

必死に働くアリは当然ながら疲れます。そうしたとき、働きアリが疲れてパフォーマンスが落ちたとき、それまで動かなかったアリがカバーするように働き始めることが確認されています。こうして、組織全体が成り立つようになっています。

当然、これはビジネスでも当てはまります。パレートの法則で重要な2割に集中することは重要です。ただ、残り8割のロングテールを完全に捨ててしまうとビジネスが破綻します。そのため、重要なことに集中しつつも、「そこまで大きな成果を出さないがブランディングにつながること」を重視してビジネスを発展させなければいけません。

マーケティングで重要なことへ集中する意義

ビジネスでは商品・サービスを開発したり、実際に売ったりしていかなければいけません。そうしたとき、売上のほとんどを作っている重要な2割は何かを考えるようにしましょう。これを見極めれば、何に注力すればいいのか分かるようになります。

ただ、起業時や新規ビジネスのときに「重要な2割は何か」を考えていてはいけません。雑でもいいのでビジネスを始めてみて、そこから何に注力するべきなのかを考えるようにしましょう。

またこのときの注意点として、「売上を作らない残り8割(ロングテール)についても非常に重要な要素となる」ことがあります。売れない8割の商品・サービスが存在することで、お客さんに選んでもらえるようになるのです。

コンビニにあらゆる商品を配置しているからこそ、困ったときに「まずはコンビニへ行こう」と思ってもらえるのと同じ戦略を取るのです。ブランディングを考えるうえで、本当の意味で2割だけの商品・サービスに注力すればいいわけではありません。

このような考え方や長所・短所、さらには実際の使い方を理解したうえでパレートの法則を利用しましょう。成果の大きい重要な20%に着目しつつ、残り80%のロングテールまで考えることでビジネスでの売上が大きくなっていきます。

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