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日本には、毎年膨大な数の外国人観光客が訪れています。そうした訪日外国人観光客を対象としたビジネスを「インバウンドビジネス」といいます。例えば、外国人観光客向けの宿泊施設や商業施設といったものがあります。

こうした、外国人観光客を対象としたビジネスというと、一時期流行った中国人の「爆買い」をイメージする人も少なくないと思います。爆買いとは、訪日外国人観光客が、観光中に大量に買い物をすることを意味します。そして特に、2015年に中国人による大量購入から広く認識されるようになりました。

ただ、インバウンドビジネスは、そうした一面的なものだけではありません。インバウンドビジネスは、さまざまな業界で応用されており「さらに今後も需要がのびていく」と注目されているビジネスです。

そこで今回は、「インバウンド(訪日外国人観光客)ビジネスの概要」について解説します。

インバウンドビジネスとは?

インバウンドという言葉は、さまざまな場面で使われています。ただ、統一された訳語はなく、それぞれで異なった日本語で訳されています。

例えば、国土交通省では、インバウンドを「訪日外国人旅行客誘致」と表しています。その一方で、三省堂の大辞林には「外国人の訪日旅行」と記されています。

このように、一言でインバウンドといっても、確立された日本語はありません。ただ、もともとの原義は、「内向きの」「入ってくる」といった意味の形容詞であり、日本で使用される場合には、「外国人の旅行客」ということを意味します。

そのため、インバウンドビジネスとは、「外国人観光客を対象としたビジネス・商売全般」ということになります。例えば、外国人観光客向けのホテルやお土産屋、飲食店など、さまざまな業界がインバウンドビジネスを行っているといえます。

こうした、外国人観光客を対象としたインバウンドビジネスは、年々需要が伸びているビジネスモデルです。

インバウンドビジネスの現状

インバウンドビジネスは、年々市場規模が大きくなってきています。特に2011年以降、インバウンド市場は急激に伸びてきています。

インバウンドビジネスの市場

日本を訪れる外国人観光客の数は、東日本大震災があった2011年以降、急激に増えてきています。具体的には、2011年の訪日外国人観光客数が622万人出会ったのに対して、4年後の2015年には1973万人と3倍以上になっています。

実際のインバウンド市場においても、観光庁の発表によると訪日外国人における消費総額は2011年において1兆円を下回っていました。それが、2014年には約2兆円、2015年には約3.5兆円まで伸びています。

そして、旅行中に消費額が高いのは中国人観光客です。

観光庁によると、2014年の訪日外国人観光客における、一人あたりの平均旅行支出は15万1174円と報告されています。これは、交通費や宿泊費、飲食費などを全て含んだ額です。

その中で、中国人観光客における一人あたりの平均旅行支出は23万1753円と、他の国と比較してもダントツに高い支出額になっています。

このように、インバウンドビジネスの市場は、年々規模が大きくなってきています。

インバウンド商品を扱う会社の株式市場

インバウンドビジネスで取り扱う商品・サービスには、宿泊施設などだけでなく、家電製品や化粧品といったものがあります。これらは「日本製の高品質商品を安く手に入れよう」と考えている訪日外国人相手の商品です。いわゆる、冒頭で述べたような「爆買い」の対象となるものです。

そして、こうした訪日外国人を対象とした商品を販売している会社の株価は、年々高くなっています。

例えば、免税店として訪日外国人に人気のある「ドン・キホーテ」を運営している「株式会社ドンキホーテホールディングス」の株価は、2014年に3000円前後でした。それが2015年の7月には5600円まで急上昇しました。

その他にも、中国人旅行客をターゲットに化粧品などを販売している「マツモトキヨシ」を運営している「株式会社マツモトキヨシホールディングス」があります。この会社の株価も、2014年には3000円付近であったのが、2015年には5000円を超えるまでに急上昇しています。

このように、外国人旅行客を対象にインバウンド商品を販売している会社は、株価も年々伸びてきています。

インバウンドビジネスに対する日本政府の取り組み

インバウンドビジネスには、日本政府も力を入れています。特に、2014年の10月行われた税制改正では、免税対象商品が拡大されました。

具体的には、2014年までは免税の対象となるのは家電や装飾品、衣類などに限られていました。それが2014年の税制改正によって、食料費や薬品、化粧品などの消耗品も免税の対象となりました。つまり、外国人観光客が安く購入することができる商品の幅が広くなったということです。

こうした日本政府のインバウンドビジネスに対する取り組みは、2003年に開始された「ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJ)」から本格的に行われるようになりました。

ビジット・ジャパン・キャンペーンとは、小泉純一郎政権で実施された取り組みであり、簡単にいうと「訪日観光客を増やすための政策」になります。例えば、訪日観光客数を明確な数値目標として設置した「観光立国推進基本計画」が策定されたり、「観光庁」が新設されたりしました。

また、重点市場としてビジット・ジャパン・キャンペーンの対象となっている国は、2015年までに20ヶ国になっています。これらの国は、以下のとおりです。

2003年(VJ開始当初):韓国、台湾、中国、アメリカ、香港

2004年~2012年までに追加:シンガポール、タイ、マレーシア、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダ

2013年に追加:インドネシア

2015年に追加:フィリピン、ベトナム、インド、イタリア、ロシア、スペイン

こうした重点市場国の日本大使館と連携して、旅行フェアや商談会、セミナーなどを開催して、訪日外国人旅行客を増やすためのプロモーション(宣伝活動)を行っています。

ここで、日本に入国する際パスポートとは別にビザ(査証)が必要になる国が存在します。こうしたビザに関しても、日本政府はインバウンドビジネスの拡大に向けて、ビザの免除や発行条件の緩和などを推進しています。例えば、タイ人やマレーシア人(2013年7月以降)、インドネシア人(2014年12月以降)はビザなしで訪日することができるようになりました。

このように、インバウンドビジネスには、日本政府も力を入れているのです。

インバウンドビジネスを活用している業界

インバウンドビジネスの対象となる業界は、たくさん存在します。その中でも、特にインバウンドビジネスを活用している例を紹介します。

宿泊施設

当然ながら、旅行客が外国から訪日するとなると、日本での宿泊が必要になります。そのため、宿泊施設はインバウンドビジネスを活用しやすいものだといえます。

実際に、日本における宿泊施設の利用者のうち訪日外国人観光客利用者の割合は、2014年で9.5パーセントだと報告されています。つまり、日本の宿泊施設利用者の10人に1人は外国人観光客だということです。

そして、こうした外国人観光客は、日本人が宿泊施設をあまり利用しない平日の閑散時期に宿泊してくれます。そのため、外国人観光客が利用してくれるようになると、宿泊施設の閑散期稼働率は大きくアップすることになります。

商業施設

外国人観光客は、日本人と比較して購買力が非常に高いことが明らかになっています。ある百貨店では、外国人観光客の方が日本人客よりも、10倍近く客単価が高いと報告されているほどです。

特に、中国人観光客の購買力は高く、洋服から家電製品、薬、化粧品など、多種多様な商品をたくさん買います。例えば、外国人観光客の購入率が最も高いお土産は、菓子類です。それに続いて食料品、医薬品、化粧品、服などの商品がよく購入されています。

こうした外国人旅行客の購買力を活かすことで、商業施設として成功している会社は多く存在しています。

飲食店

飲食店も、インバウンドビジネスの対象となるものです。特に、「日本食」は世界中でブームとなっており、「本場の日本で日本食を食べてみたい」という外国人旅行客は少なくありません。

実際に、「外国人旅行客が訪日前にもっとも期待していたこと」について調べた調査では、「日本食を食べること」が一番多いと報告されています。つまり、外国人旅行客の多くは、「日本食を食べることを目的として訪日している」ということです。そして、外国人旅行客が食べる日本食は多岐にわたります。

例えば、寿司や天ぷらは、外国人旅行客が好む代表的な日本食です。その他にも、ラーメンやとんかつ、カレーライス、お好み焼きなども、外国人観光客に人気の食べ物です。

このように、飲食店はインバウンドを対象にビジネスを行いやすいものだといえます。

交通機関

飛行機や船などは、外国人観光客が訪日する交通手段です。こうした、海外から日本への交通手段は「一次交通」といわれます。それに対して、日本国内で利用されるタクシーや新幹線、バスなどは「二次交通」と呼ばれます。

当然ながら、こうした交通機関はインバウンドビジネスの対象となります。実際に、訪日外国人旅行客に向けて、交通機関はどんどん整備されています。

例えば、空の便である飛行機は、アジア地域を中心に、どんどん増便されています。そして、成田国際空港や関西国際空港、福岡空港などの外国人利用率は年々増えています。

また、二次交通に関しても、外国人専用の乗り放題チケットや、観光案内付きタクシーなど、さまざまなサービスが実施されています。

メーカー

日本において、国内における売上に悩んでいるメーカーは少なくありません。ただ、そうした国内市場で苦戦しているメーカーでも、外国人観光客を対象にすれば商品が売れるチャンスは大いに広がります。

海外において、日本製の製品は質が高いことで有名です。日本人の勤勉さや職人文化が影響しているためか、日本製の商品は海外での評価が高いです。そのため、日本製の製品は、多少価格が高くても外国人観光客に売れやすい傾向にあります

実際に、カシオやシチズンといった腕時計メーカーは、日本製の腕時計を量産し、外国人観光客のニーズに応えるような取り組みを行っています。

しかしそうはいっても、外国人観光客に日本製の商品を販売する場合には、いくつか課題もあります。例えば、海外でも修理などのアフターサービスが充実していなければ、帰国後に商品が故障した際に直すことができません。また、海外(現地)における広告施策も考えなければいけません。

こうした課題はクリアしなければいけませんが、メーカーがインバウンドを対象としたビジネスを展開することには、大きな可能性があるといえます。

インバウンドビジネスの可能性と課題

既に述べたように、インバウンドビジネスの市場は年々大きくなっています。そして、実際にインバウンドビジネスで成功している企業も増えてきています。

また、インバウンドビジネスを行っている代表的な業界として、宿泊施設や商業施設などを挙げました。ただ、インバウンドビジネスは、以上に挙げた業界以外にも、さまざまな分野に波及しています。

例えば、美容室やカラオケ、スポーツ施設などでは、インバウンドビジネスに取り組んでいる企業が出てきています。他にも、こうしたさまざまな業界への広がりに合わせて、物流業界や人材業界などもインバウンドビジネスへ参入しています。

一方で、インバウンドビジネスには残されている課題もあります。

具体的には、「空の便が足りていない」「観光バスが用意できない」「観光地の近くのホテルに泊まれない」といったことが挙げられます。こうしたインバウンドビジネスで起こっている問題の多くは、主に「需要に対する供給が不足する」ことによって生じています。

今後も市場が拡大すると予測されるインバウンドビジネスで成功するためには、こうしたキャパシティ不足の問題を解消することが必須になります。

今回述べたように、日本においてインバウンドビジネスは年々需要が伸びており、今後さらに市場が拡大していくことが期待されています。そして、インバウンドビジネスは、さまざまな分野に波及してきており、インバウンドに関連しない業界はほとんどないような状態になりつつあります。

あなたの会社にも、こうしたインバウンドビジネスを取り入れることで、さらなるビジネスの拡大につながるはずです。

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