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中小企業経営者が会社から報酬(役員報酬)を受け取るとき、それに対して所得税が課せられることになります。そして、社長が自らの報酬をどのように受け取るかによって、課せられる税金の大きさが変動します。

また、経営者が自身の報酬を定めるときに考えるべきものに「退職金(役員退職金)」が挙げられます。その理由は、退職金は役員報酬よりも税金面で有利であるためです。

そこで今回は、「経営者が役員報酬と役員退職金を調整して節税する方法」について解説していきます。

社長の立場の違いによる報酬の捉え方

あなたが社長として経営を担当しているとき、あなたがどのような立場の社長であるかによって、「自身の報酬が高い方が良いかどうか」が異なります。

例えば、会社のオーナーが他人であり、そのオーナーに依頼されて経営を行う「雇われ社長」であれば、自身の報酬が高ければ高いほど良いといえます。その理由は、雇われ社長は自分の報酬だけを自由に使うことができ、会社の資金まではコントロールできないからです。

オーナー社長は、会社の所得と自分の報酬のバランスに注目する

一方、自社株のほとんどを保有している「オーナー社長」であれば、自分の報酬だけでなく会社が得た利益も自ら活用することができます。さらに、会社が得た利益には法人税が課せられ、社長個人の報酬には所得税が課せられます。そして、これらの税率はそれぞれ異なります。

そのためオーナー社長の場合、雇われ社長のように「自分の報酬が高ければ高いほど良い」とは言い切れません。法人税と所得税のことを考慮したうえで、会社の利益と自らの報酬を調整する必要があるのです。

社長個人の報酬は、一般社員の給与と同じ扱いになる

所得税法では、一般社員が会社から給料をもらうケースと同じように、社長が会社から受け取る報酬(役員報酬)も「給与所得」という扱いになります。そして、従業員の給料にかかる所得税と社長がもらう役員報酬に課せられる所得税は、どちらも同じ計算式で求められます。

日本の場合、所得が大きくなればなるほど段階的に税率が高くなる「超過累進課税」制度が適用されています。具体的な金額と税率は、以下のように定められています。

課税所得 税率 控除額
以下
  195万円 5% 0円
195万円 330万円 10% 97,500円
330万円 695万円 20% 427,500円
695万円 900万円 23% 636,000円
900万円 1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円 4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円   45% 4,796,000円

さらに所得税法では、給与額の一部を経費として控除することができる「給与所得控除」も設定されています。具体的な金額とその控除額は、それぞれ以下のように決められています。(平成29年分)

1年あたりの給与額 給与所得控除額(経費に認められる金額)
以下
  1,800,000円 給料 × 40%(650,000円に達しない場合は650,000円)
1,800,000円 3,600,000円 給料 × 30% + 180,000円
3,600,000円 6,600,000円 給料 × 20% + 540,000円
6,600,000円 10,000,000円 給料 × 10% + 1,200,000円
10,000,000円   2,200,000円(上限)

このように給与所得控除では、給与額によって「どのくらいの金額が経費として認められるのか」が変動します。そのため、オーナー社長が自分の報酬を決定するときは、給与所得控除額に注目したうえで判断するべきだといえます。

社長の報酬には、3種類ある:役員報酬、役員賞与、役員退職金

法人税法から見た場合、社長個人の報酬には「役員報酬」「役員賞与」「役員退職金」の3つが存在します。これらのうち役員賞与は、「役員報酬のように規定されている報酬以外で、臨時的に支給される報酬」のことを指します。

法人税法では、役員賞与は役員報酬とは異なり、その金額を経費として計上することができません。そのため、社長が会社から報酬をもらうとき、役員賞与としてではなく役員報酬として受け取った方が納税額を減らすこととなります。

役員報酬よりも役員退職金の方が得になりやすい

一方、役員退職金には「退職金控除」という制度が適用されています。そして過去の税法上、退職金控除は役員報酬に設定されている給与所得控除よりも優遇される傾向にあります。

例えば、あなたが1年ごとに給料として2000万円の役員報酬を得ていたとします。このとき、平成29年時点での給与所得控除制度が適用されている場合、2000万円から給与所得控除の上限である220万円が差し引かれます。これによって、残りの1780万円に対して所得税が課せられます。(基礎控除や社会保険控除など、その他の控除を考慮しない)

すると、「1780万円 × 33% ― 1,536,000 = 4,338,000円」となり、4,338,000円を所得税として納めなければいけません。そのため、手元に残る報酬は1566万2000円になります。

一方、2000万円を役員退職金として受け取る場合、「退職所得の金額 =(退職金 - 退職所得控除額)÷2」という計算式が適用されます。

このとき、勤続年数が20年以下であれば、退職所得控除額は「40万円×勤続年数」という計算式で求められます。そのため、勤続年数が20年であれば、退職所得控除額は「40万円 × 20年 = 800万円」となります。

これを先ほどの例にあてはめて計算すると、「2000万円(退職金) ― 800万円(退職所得控除額) ÷ 2 = 600万円」となり、この600万円に対して所得税が課せられます。すると、「600万円 × 20% ― 42万7,500円 = 77万2500円」の所得税が退職金2000万円から差し引かれ、1922万7500円が手元に残ります。

勤続年数に応じて、退職所得控除額の計算式は異なる

その一方で、勤続年数が20年を超えている場合には、退職所得控除額は「70万円×(勤続年数―20年)+800万円」という計算で求められます。そのため、勤続年数が30年であれば「70万円×(30年 ― 20年) + 800万円 = 1500万円」になります。

これを先ほどの例にあてはめて計算すると、「2000万円(退職金) ― 1500万円(退職所得控除額) ÷ 2 = 250万円」となり、この250万円に対して所得税が課せられます。これにより、「250万円 × 10% ― 9万7500円 = 15万2500円」の所得税が退職金2000万円から差し引かれ、1984万7500円を手元に残すことができます。

いずれにしても、社長が会社からの報酬を役員報酬として受け取るよりも役員退職金として受け取った方が、手元に残る金額に大きな差が出ることになります。

ただし、税法は毎年のように変更があります。そのため、「役員報酬に比べて、役員退職金で受け取ることで金額にどのくらいの差が出るか」は、そのときの税法によって変動します。このことから、「報酬のうちどのくらいを役員退職金に回すべきか」については、そのときの税法を調べたうえで顧問税理士と相談して決めるようにしましょう。

このように、経営者が自らの報酬を設定する場合、その一部を役員退職金に回すことによって納税額をより少なくすることができます。その結果、社長自身が自分のために使うお金を、より多く確保できるようになります。役員退職金を上手に活用し、老後の備えをより盤石なものにしましょう。

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